古代ローマにおける賃約(locatio conductio)と「奴隷労働」
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- 五十君 麻里子
- 研究代表者
- 九州大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP18K01219 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 18K01219
- 研究種目
- 基盤研究(C)
- 配分区分
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- 基金
- 審査区分/研究分野
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- 小区分05010:基礎法学関連
- 研究機関
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- 九州大学
- 研究期間 (年度)
- 2018-04-01 〜 2022-03-31
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 4,420,000 円 (直接経費: 3,400,000 円 間接経費: 1,020,000 円)
研究概要
当初は契約と奴隷労働との二重の労働供給システムを対象とする予定であったが、ローマではこれが自明であったこと、家(familia)を生活保障の場と捉えると自由人と奴隷との間に明確な差はなかったことが明らかとなったため、研究対象を解放奴隷へとシフトした。その結果、奴隷は解放された後も元主人の下に残り、その庇護と扶養を受けて生活を続けたこと、扶養義務は遺言によって元主人の相続人にも承継されたこと、さらに相続人と解放自由人との合意による扶養内容の変更には、とりわけマルクス・アウレリウス帝によって厳格な手続きが定められ、生活保障機能が公に強化されたこと、が判明した。
現在進行する「働き方改革」により、失われる職場の「居場所」あるいはセーフティネットとしての機能を、ローマでは家が担っていたこと、またその保護には奴隷のみならず解放奴隷までもが浴していたことが、本研究で明らかとなり、この方面での対策が急務であることが社会的に認知されるべきであろう。また、奴隷が解放されて自由人となった後も、元主人のもとに残ったのは、従来のローマ法研究では、元主人への労務(opera)提供のためと考えられてきたが、解放奴隷自身が元主人の扶養を受けるためでもあったことを明らかにしたことは、大きな学術的意義を有する。

