室堂平周辺湖沼では,地獄谷に隣接したミクリガ池に比べてミドリガ池の方が地獄谷の噴気の影響を強く受けていた.血の池は2017年と比べて酸性成分の濃度は低下したがpHの値は2017年と同程度であった.リンドウ池のpHは2.93で2018年も強い酸性を示した.地獄谷内を流れる紺屋川には強酸性の温泉水が流入しており,2018年は硫酸イオン濃度,塩化物イオン濃度共に2017年よりも高い値を示した.立山カルデラ内の新湯では硫酸イオン,塩化物イオンの濃度は,紺屋川と同程度であったがpHは3.39と高く,中和成分のナトリウムイオン濃度が高いことが原因として考えられた.また,餓鬼ノ田圃(黒部川の上流),奥大日岳稜線付近の池沼,および,追分の池塘の水質は降水がそのまま溜まったものと推定された.
富山市科学博物館研究報告 = Bulletin of the Toyama Science Museum 43 145-147, 2019-07-01
富山市科学博物館