宮本常一の西日本社会論 : 「合理性」への関心と村落社会構造の把握

書誌事項

タイトル別名
  • ミヤモト ツネイチ ノ ニシニホン シャカイロン ゴウリセイ エ ノ カンシン ト ソンラク シャカイ コウゾウ ノ ハアク
  • The Perspective for Analysing Japanese Rural Area by Tuneichi MIYAMOTO

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抄録

type:article

宮本常一は西日本社会の村落構造と,東日本の村落構造には相違があることを指摘している。宮本はそれぞれの村落社会に固有にみられる「合理性」の内容やタイプに関心をいだいた。本稿は宮本常一の著作を通して,宮本の「合理性」着想の根拠を明らかにする。 宮本がある種の「合理性」に関心を抱くようになったのは,2つの経験が基盤になっている。1つは自らの農業経験,もう1つは終戦前後に食糧供出要請の公職を担当した経験である。篤農家と交流を重ね,徹底した合理性の追求と,それに対する合意・承認が,村落社会の自律的なしくみの根底にあることを見出していった。1950年代に入って,宮本の研究対象は漁業・漁村,離島に広がり,徹底した合理性,それを貫徹するために保障することが必要な対等な関係性,それらを基盤にして調達できる合意・承認の在り方に対する理解が深まっていった。 宮本は,村落社会で見かけた「合意・承認のあり方」について,様々な角度から繰り返し記述している。合意が形成されるには,フォーマルな話し合いの場である「村の寄合い」と,インフォーマルな情報交換ルートが密接に関連していることが重要であった。インフォーマルな情報交換の担い手として,宮本が着目したのが年齢別集団の高齢者とジェンダー別集団の女性たちである。 宮本は「合理性」に着目することによって,コミュニケーションが行われている物理的空間,発言を活性化させる対等な関係性,活発なコミュニケーションの機会を内蔵している村落社会の実態を明らかにしていった。 宮本が歩いたのは第一次産業就業者層がまだ多数存在していた戦後の村落である。各集落が維持していた「合理性」のあり方を看取できる時代に,村落を綿密に調査し,コミュニケーションの実態,空間利用のありかた,集団内の関係性に着目することの重要性を宮本は指摘したのである。

identifier:http://repository.musashi.ac.jp/dspace/handle/11149/268

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