原蚕人工飼料育における稚蚕期飼育温度について

抄録

人工飼料による原蚕の飼育環境研究の一環として,稚蚕の飼育温度の高低がカイコの生育に及ぼす影響について調べ,概要つぎの結果を得た.1~3齢を26℃と28℃の恒温(暗条件)で飼育した場合の飼育経過時間には差異がなく,また眠蚕体重は28℃飼育が概して重かったが,4齢起蚕時のカイコの発育や揃いや減蚕歩合には一定の傾向はみられなかった.2)24℃と28℃さらに両温度区に明暗の光条件を設定し試験を行った結果,飼育経過時間は28℃区に比べ24℃区が遅延したが,28℃区の場合は光条件が異なると同一温度でも発育経過に差異があり,明飼育は暗飼育より経過時間が遅延した.2眠蚕および3眠蚕体重は28℃恒明区が重かったが,4齢起蚕時におけるカイコの発育の揃いは28℃恒明区が悪く,28℃恒暗区が良かった.28℃恒明区には一部3眠蚕が出現した.3)1~2齢および3齢をそれぞれ25℃,28℃および31℃の飼育温度を組み合わせて飼育を行った結果,飼育経過時間は飼育温度の高いほど短くなり,眠蚕体重も高温飼育区で重くなったが,カイコの発育の揃いは1~2齢28℃,3齢28℃~25℃飼育区が良かった.4)稚蚕の飼育温度(26℃,28℃,30℃)と繭の計量形質,産卵性には一定の傾向は認められなかった.5)全齢人工飼料育による繭の計量形質,産卵性を桑葉育のそれと比較したところ,繭の計量形質では概して桑葉育が良かった.産卵数は人工飼料育の場合,蚕品種により数%から数十%多かったが,不受精卵が多発した.6)単原種とその交雑原種の比較試験では,日本種は単原種より交雑原種が各齢の眠蚕体重が重く,4齢起蚕時の発育も比較的斉一で,減蚕も顕著に少なかった.これに対して支那種の交雑原種では両単原種より特に勝る傾向は示されなかった.単原種および交雑原種における飼育温度とカイコの発育との関係では,1~2齢の飼育温度において31℃飼育が概して各齢の眠蚕体重を重くする傾向を示したが,カイコの発育の揃い,減蚕歩合は28℃飼育が全般的に変動が少なく良い結果を示した.

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