『グリム童話集』における数字使用 : コンピュータ検索と作品内在分析の連携

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  • 『 グリム ドウワシュウ 』 ニ オケル スウジ シヨウ : コンピュータ ケンサク ト サクヒン ナイザイ ブンセキ ノ レンケイ
  • Der Gebrauchder Zahleninden “Kinder-und Hausmärchen” der Brüder Grimm : In Form der Computer-Suche und der werkimmanenten Analyse

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本論は、グリム兄弟が『グリム童話集(KHM)』の個々のメルヘンを彫するに際して、数字もまた重要な役割をはたしていたのではないか、と考え、それを作品内在論理解析方法と、デジタルデータの検索方法とを結合して、考察しようとしたものである。第一章は、数字3と数字2が要となっているKHM中の名高いメルヘンKHM55「ルンペルシュティルツヒェン」とKHM21「灰かぶり」の2篇を、作品内在分析によって構造解析し、その内在論理と数字との緊密な関係を証明する。第二章は、一転してKHMの全ての版(草稿から第七版まで)における数字使用頻度を、それ用に特別に作成したKHM全版のファイルに基づいてコンピュータによって検索し、その一覧を作成した。その検索結果の中で特に注目すべきは、数字3の総体的減数と、それと反比例する数字2の圧倒的多数状況および版改訂に伴いふくれあがっていく数字2の激増事実である。続く第三章は、数字2の覇権への動きというその検索結果を、KHM中最も分量が多くかつグリムたちの最自信作であり、メルヘン史上およびグリムたちにとって『グリム童話集』の要といえるメルヘンで、題名にも数字2を冠しつつも、各種の数字が入り乱れるため数字的意味等の解読の著しく困難なKHM60「二人兄弟」において、内在分析の側から検証する。だが、そこに現れる全ての数字と数字的事象(明示されないが、数字が意識されている現象)を順次列挙していく時、内在分析からは、数字2が諸数の乱数表的状態という森の中を冥界として経巡り、最終的には数字1へ、正確には2にして1である[2・1融合状態]へと収斂かつ帰還し蘇る、という「V字プロセス」(高橋)軌道の潜在が析出されてきた。この時、第二章でのKHM全体へのデジタル数字検索結果(数字2の覇権と拡大への傾向)と、第三章での詳細な内在分析が明らかにした数字2の冥府行およびその1との融合経緯とは、みごとな対応関係を見せる。その対応事実の確認からはさらに、KHM全体において、またその双子たちのように親密なグリム兄弟やドイツ・ロマン派自身にとって、数字2に秘かに託されていた深甚な遍歴と融合の機能の潜在もまた、浮かびあがってくるように思われるのである。

Journal

  • Media and Communication Studies

    Media and Communication Studies 66 1-57, 2014-03-31

    北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院

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