福祉哲学再考のための試論

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  • フクシ テツガク サイコウ ノ タメ ノ シロン

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抄録

岡村は,自身の地域福祉の思想の根底に和辻の哲学(倫理学)があることを示唆している.そして和辻の哲学は,岡村理論の大枠を規定している.筆者は,岡村理論が和辻の哲学からどのように影響を受け,またそれをどのように批判的に継承しているのかを,和辻の哲学にさかのぼって,検討した.その上で,岡村が人間理解や共同体理解にとって重要とみなした「主体性」「生活者」「多元主義的社会」などの概念が,現代の社会福祉の人間理解や共同体理解にとっていかに重要な視点を持つのかを明らかにすると同時に,こうした概念に対する批判についても検討した.また岡村は,人間理解の方法として,和辻の書物を通して理解した「解釈学」の方法を採用するが,昨今,「現象学」の方法が見直される中,改めて「解釈学」の方法の意義を説明した.ただし,岡村の「主体性」や「共同体」論には,<他者性>の契機が弱い.承認論の視点を組み入れることで,岡村理論が現代的有効性を持ちうることを示した.

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