日豪の環境紹介プログラムにみる環境に対する意識 : 休暇村鹿沢高原とオーストラリアキングフィッシャーベイの比較研究

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  • ニチゴウ ノ カンキョウ ショウカイ プログラム ニ ミル カンキョウ ニ タイスル イシキ キュウカムラ カザワ コウゲン ト オーストラリア キングフィッシャー ベイ ノ ヒカク ケンキュウ

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抄録

本研究は,日本とオーストラリアの滞在型休養地におけるボランティア或いはレンジャーによる地域の環境紹介プログラムを比較し,背景にある環境に対する意識についての考察をおこなった.対象としたのは,上信越高原国立公園内にある休暇村鹿沢高原を本拠地とする鹿沢自然観察ボランティアの会による環境紹介プログラムと,国立公園であり世界遺産の指定も受けているオーストラリア フレーザー島のキングフィッシャーベイ・リゾート アンド ヴィレッジにおけるエコ・ツーリズムの考え方に基づく環境紹介プログラムである.オーストラリア フレーザー島では,厳正に保護・保存されている原生的自然環境地域と,環境に配慮し最新技術を駆使した設備によるリゾート地域が共存している.自然環境の中では釣りやカヌーといった能動的なプログラムも行われている.レンジャーによる環境紹介では,カウリ(Agathis sustrale)の巨木や先住民であるアボリジニの生活の知恵に関する内容も紹介されている.一方,休暇村鹿沢高原では,ボランティアと共に散策を中心とした自然紹介活動が行われ,絶えず新たな内容が検討されているが,地域に関する歴史などの社会環境に関する内容はほとんど含まない.両調査地を比較した結果,オーストラリアには,原生的自然環境を積極的に保護・保全しつつ,近代的設備の中で隔離された自然環境を相応の代価を支払って観賞するという二面性がみられる.それに対して,日本では自然に対して能動的に働きかけて楽しむのではなく,愛で視覚的に観賞するという意識をもつことがわかった.今後日本では,自然環境と社会環境を融合した環境紹介を進展させていくことが,広い意味での環境への取り組みになると考えられる.

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