関節可動域、足圧中心、関節モーメントから見たしゃがみ込み動作の分析

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抄録

【はじめに】我々は第37回日本理学療法士学会において静的しゃがみ姿勢について関節可動域、関節モーメントの観点から分析し、不可能群では足関節可動域の低下、足圧中心移動距離の増大が見られたと報告した.今回しゃがみ動作の特性をとらえるため、動的動作としてしゃがみ込み動作に関して関節可動域、足圧中心、関節モーメントの変化から比較検討したので報告する.【対象と方法】対象は下肢に障害の既往がない健常青年19人(男性6人、女性13人)、平均年齢20.5±1.3歳であった.そのうちしゃがみ込み可能であった15人を可能群とし、しゃがみ込み不可能であった4人を不可能群とした.各被験者は日本整形外科学会(改訂版)を指標に角度計を用い他動的に下肢関節角度計測後、左右独立式床反力計(アニマ社製MG1120)の上にそれぞれ裸足で乗り、足底全接地にて両側足底内側線が触れる状態で、平行に立ち、肩関節90°屈曲、内旋位、肘関節伸展位にて前方を注視させた.検者の合図によりしゃがみ込みを開始し、しゃがみ込みのスピードは任意とした.また三次元動作解析装置(アニマ社製Locus MA6250)を用い肩峰、大転子、外側上顆、外果、第5中足骨頭の計5カ所に赤外線反射マーカーを付け、5秒間のしゃがみ込み動作の計測をサンプリング周波数60Hzにて2度行った.これらより各関節角度、動作中の可動域変化、膝および足関節モーメントと足圧中心の最大移動距離を求め、可能群と不可能群の転倒するまでを比較検討した.また、統計にはMann-WhitneyU検定を用い、危険率5%未満を有意差有りとした.【結果】可動域に関しては角度計による計測、三次元動作解析装置による計測共に股関節、膝関節可動域において有意な差は認められず、足関節可動域についてのみ可能群で有意に大きな差が認められた.また三次元動作解析装置による計測では股関節のみ可能群より不可能群で可動域が大きくなる傾向が見られた.関節モーメントでは膝関節伸展モーメント、足関節底屈モーメント共に有意な差は認められなかったが、足関節底屈モーメントにおいて不可能群で大きくなる傾向が見られた.足圧中心の前後成分と左右成分の最大移動距離は共に可能群より不可能群で有意に大きかった.【考察】今回の研究において、不可能群で足関節の柔軟性低下、足圧中心の移動距離の増大が認められた.仮説として、可能群の関節モーメントにおいて重心を前方に移動させ、バランスを維持するために足関節底屈モーメントが大きくなるのではないかと予測した.しかし結果から足関節底屈モーメントにおいて不可能群で大きくなる傾向が見られた.これは足関節底屈可動域が小さいことから足関節底屈筋出力の低下が起こる.しかし体幹の前方移動で代償することで足圧中心を前方へ持ってきており、底屈モーメントの増加につながったと考えられる.これらのことから若者のしゃがみ込み動作には、十分な足関節背屈可動域が必要と考えられた.

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