難治性有瘻性膿胸に気管支塞栓術を併用した有茎大網充填術が有効であった1例

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タイトル別名
  • A Case of Empyema with Bronchopleural Fistula Treated by Omentoplasty and Bronchial Occlusion with Silicone Spigots

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抄録

緒言.間質性肺炎に合併した気胸は難治性であり,またステロイドなどの使用による易感染性から慢性膿胸に至る症例が多い.膿胸治療の原則は感染制御・膿胸腔の閉鎖であり,全身状態の悪い症例や感染の制御が困難な症例に対してはしばしば開窓術が選択されることがある.しかし慢性呼吸不全の患者では開窓術後の根治術は困難であり,終生閉鎖できない可能性がある.今回我々は,間質性肺炎に合併した有瘻性膿胸に対してEWSによる気管支塞栓術と有茎大網充填術を併施し,治癒せしめた症例を経験したので報告する.症例.60歳代,男性.間質性肺炎の急性増悪のため当院内科に入院,抗生剤およびステロイドによる治療を行われていた.入院中に右気胸を認め,胸腔ドレナージを開始した.EWSによる塞栓を試みるも効果なく,発症から1カ月後に全身麻酔下に手術(肺瘻部の直接縫合,フィブリノゲン配合シートの貼付)を施行した.術中採取胸水よりAspergillusを検出し,有瘻性膿胸の状態であると考えられた.術後第2病日より気漏の再発を認め改善がみられなかったため,初回手術より13日後に再手術を行った.再手術ではEWSで責任気管支の塞栓を行い,有茎大網を胸骨後経路で挙上し膿胸腔に充填した.術後は気漏を認めず,炎症反応は速やかに改善した.結語.難治性有瘻性膿胸に対する治療手段として大網充填は有用な治療法であることは知られているが,EWSにより気漏の制御を行うことで大網の生着を助ける可能性がある.今回の症例のような感染が制御されていない状態や活動性気漏がある場合で開窓術を回避したい場合に,特に有効であると考えられた.

収録刊行物

  • 気管支学

    気管支学 38 (3), 235-240, 2016

    特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会

被引用文献 (3)*注記

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