高血圧症の食事療法についての考察

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タイトル別名
  • A STUDY OF DIETARY THERAPY FOR THE TREATMENT OF HYPERTENSION
  • コウケツアツショウ ノ ショクジ リョウホウ ニ ツイテ ノ コウサツ

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高血圧症は脳血管障害, 心疾患の重要な危険因子の1つであり, その治療には一般療法と薬物療法とがある.今回, 本態性高血圧症患者に対して一般療法のなかの食事療法を施行し, その効果を観察した成績である.対象は従業員約3000人の一事業所において, 4年間, 定期健康診断により高血圧を指摘された患者180例のうち, 夜勤, 出張等により一定の食事療法継続に堪え得なかった脱落者を除いて薬物による治療中の者27例, 薬物治療を受けたことのない未治療者19例, 計46例について検討した.全例男性であり, 20~29歳の間の患者6例, 30~39歳7例, 40~49歳17例, 50~59歳16例であり, 血圧は本療法開始前2回測定を行ない, その平均値が収縮期圧150mmHg以上, 拡張期圧90mmHg以上とした.本療法施行前に胸部X線, 心電図, 眼底検査, 尿, 血清生化学検査を行ない合併症を調査し重症度を検討した.その重症度は東大三内科合同高血圧研究班の分類により判定したが, その指数は6以下の軽症43例, 7~10の中等症3例であった.食事指導の期間は11週間とし, 食事内容は調味料として1日8g食塩, 1800カロリーの低カロリー食を目標として普通の労働にたえる栄養所要量の食品構成とした.食品は香川式食事法により食品の組み合せをバランス良く適量摂るようにした.食塩は調味料を使わずとも1日約29は摂取することになるので毎日の食事内容を記録させ, 毎週1回食事記録から食塩およびカロリー計算を実施した.本食事療法施行後ほとんど全例において血圧は下降し, 体重も減少傾向を示した.ことに標準体重を越えた群, 及び薬物療法を受けていなかった高血圧者群では血圧の下降は顕著であった.また食品からの食塩摂取量を詳細に計算できた34例は本療法施行後, それまでの多量の食塩摂取量から脱し少ない食塩摂取量に慣れてきて, それとともに血圧も下降安定する傾向があった.本研究は一事業所において勤務中の集団の患者に対して, 食事療法の効果を観察できた点に意義があると思われる.しかし本態性高血圧症の治療が生涯にわたる長期のものであり, いかに本療法を長期間実行できるかという点に問題があり, 今後施行者の追跡調査が指導者の拡大とともに必要であると考えられる.

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