高齢者における抗血小板療法

書誌事項

タイトル別名
  • Antiplatelet Therapy in Elderly.
  • コウレイシャ ニ オケル コウケッショウバン リョウホウ

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説明

抗血小板療法は, 薬剤により血小板の機能を低下させることにより, 血栓症の発現を阻止しようとする治療法である. 当然, このときには出血性素因を呈することが予想されるが, ヒトの止血機序には大きな余裕があるので, 著明な出血症状をきたすことはない. これが抗血小板療法の根拠である. 動脈血栓中には静脈血栓に比べ多量の血小板が含まれ, このため, 血栓の発現には血小板が比較的大きな役割を演ずることが予想される. したがって動脈の血栓の予防には抗血小板療法が理論的には有効である可能性が大きい. したがって, 冠動脈疾患, 虚血性脳血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患が主として抗血小板療法の対象となる. ただし, 高齢者で動脈硬化の強い例では, 血栓予防にはより強力な抗血小板薬が必要であることが予想され, このときには出血性素因が強くなる可能性がある点が問題である. 理想的には血栓を生じ易い例を血液検査である程度選び出すことができ, また抗血小板薬の投与によりそのような傾向を改善できたことを証明できればよいが, 現状では不可能である. この点で, 抗血小板薬の効果判定には, 条件の比較的一致した2群を選び, 一方には効果を調べたい抗血小板薬を, 一方には偽薬または効果がある程度知られている薬剤を投与し, 両群の予後を比較する方法がとられる. ただし, この方法は膨大な症例数と時間が必要であり, 費用のかかる点が欠点である. 現在, わが国で用いられている抗血小板薬は, 抗凝固薬とは異なり, その効果に個人差が少なく, また経口投与が可能である上に比較的効果の持続時間も長く, また副作用としての出血も少ない点で理想に近い. ただし, 最近, 欧米では, 血小板の凝集に関与する血小板膜の glycoprotein IIb/IIIa複合体の受容体を阻止する新しい薬剤 (経口投与可能な薬剤も開発された) が登場し, 新しい発展がみられつつある.

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参考文献 (93)*注記

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