外来生物アライグマによる樹上でのサッポロマイマイの捕食行動

  • 佐伯 いく代
    Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba
  • 丹羽 慈
    Network Center of Forest and Grassland Survey, Monitoring Sites 1000 Project, Japan Wildlife Research Center
  • 長田 典之
    Tomakomai Experimental Forest, Hokkaido University

書誌事項

タイトル別名
  • Predation of a Rare Arboreal Land Snail <i>Euhadra brandtii sapporo</i> by Introduced Common Raccoon <i>Procyon lotor</i>
  • Predation of a Rare Arboreal Land Snail Euhadra brandtii sapporo by Introduced Common Raccoon Procyon lotor

この論文をさがす

抄録

<p>陸産貝類は,世界的にきわめて高い多様性をもつ生物種群である。しかし,外来生物の侵入により,その多くは絶滅の危機にさらされている。一方,樹上に生息する陸産貝類については,観察の難しさなどから,生態や外来生物の影響などに関する知見が乏しい。そこでわたしたちは,樹上性カタツムリであるサッポロマイマイ(Euhadra brandtii sapporo)の捕食者相を調べることとした。調査は,北海道大学苫小牧研究林にて行った。調査木を3本選び,約50 cmの糸をつけたサッポロマイマイを8個体ずつ,高さ約10 mの樹上と,地表とに固定し,赤外線自動センサーカメラによって15日間観察した。樹上では,1本の調査木において,アライグマがサッポロマイマイを捕食する映像が撮影された。しかしその他の調査木では,捕食による死亡は確認できず,生存率は80%以上であった。一方,地表に固定したサッポロマイマイの生存率は0~25%であった。ビデオ映像から,地表ではタヌキによって捕食され死亡したサッポロマイマイが少なくとも4個体あることが確認された。これらの結果から,(1)サッポロマイマイが樹上で生活することは,地上の捕食者から逃れ,生存率を高める効果があること,(2)しかしアライグマが侵入すると,樹上にいても捕食され,死亡するリスクが高まることが示唆された。アライグマは,特定外来生物に指定されており,多くの在来種を捕食することが知られている。しかし,観察の難しい樹上性生物への影響は見過ごされやすいと考えられ,注意が必要である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ