糖尿病神経障害と診断された舌咽神経痛の一症例

DOI
  • 松本 文博
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔内科学分野
  • 桃田 幸弘
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔内科学分野
  • 高野 栄之
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔内科学分野
  • 松香 芳三
    徳島大学大学院医歯薬学研究部顎機能咬合再建学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Glossopharyngeal Neuralgia Caused by Diabetes Mellitus:A Case Report

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抄録

症例の概要:症例は35歳の女性.X年6月頃より食事の際に食物が口に入ると左側耳前部,下顎角部から顎下部にかけて刺すような痛みを覚えるようになった.開業歯科医院を受診し顎関節症と診断されスプリント治療を受けたが改善なく,同年10月徳島大学病院高次歯科診療部顎関節症外来を受診した.疼痛は1~数分間持続し特に酸味や濃い味の食物で激痛となった.舌咽神経痛を疑いカルバマゼピンの内服を開始し疼痛の軽減を認めたが消失には至らなかった.その後薬物治療中に手の違和感を訴えたため,血液検査を行ったところ著明な血糖値の上昇を認めた.内分泌内科にて2型糖尿病と診断され,糖尿病治療を受け約1年後には発作性神経痛はほぼ消失した.<br>考察:糖尿病神経障害の一つとしての舌咽神経痛の報告例は少ないが,その特徴として,40歳以下が多いこと,過半数が両側性であることなどが指摘されている.本症例においても年齢が35歳と若年であり,糖尿病治療中に両側性に発作性疼痛を認めたことなど過去の報告例と一致していた.また血糖値をコントロールすることで発作性疼痛が完全に消失したことなどから糖尿病神経障害と確定診断した.<br>結論:糖尿病合併症の一つである舌咽神経痛の一症例を報告した.歯科医師は顎関節部を含む口腔顔面領域の疼痛性疾患の診断に際し糖尿病神経障害にも留意し,現病歴,既往歴,家族歴,心理・社会的要因を含め丁寧な医療面接を心がける重要性が確認された.

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