『大正蔵』校勘上の一問題

書誌事項

タイトル別名
  • On the collation of Taisho Tripitaka:
  • On the collation of Taisho Tripitaka: a case on Foshuo Da Anban Shouyi Jing T602
  • ―― 『仏説大安般守意経』を例として――
  • A case on Foshuo Da Anban Shouyi Jing T602

この論文をさがす

抄録

『大二日本校訂縮刷大蔵経』(以下『縮刷蔵』,1885年)は,『高麗大蔵経』(以下『高麗蔵』)テキストを底本に,『思渓資福蔵』(宋本),『普寧蔵』(元本),『北蔵』(明本)等のテキストとの異同の校訂情報を載せたものである.一方『大正新脩大蔵経』(以下『大正蔵』)は,同じように『高麗蔵』テキストを底本に,宋本・元本・明本(黄檗蔵)との校勘を引き継ぎ,それに『宮内省図書寮本』(宮本)や『聖語蔵』などのテキストとの校勘を付加したものである.本稿は,『大正蔵』所収『仏説大安般守意経』巻上・巻下(T602)の校訂200箇所と,『縮刷蔵』の同経校訂箇所を対照し,『大正蔵』における校勘の問題点について研究した報告である.『縮刷蔵』から引き継がれた校訂の内容を『大正蔵』が再校訂しなかったことによるとみられる9箇所の錯誤が発見された.一方で,再校訂をしている所もあり,『縮刷蔵』の8箇所の錯誤が訂正されている.この「再校訂をしなかった9箇所」と「再訂正をした8箇所」は,「9対8」というほぼ「1対1」の比率になる.ここから,『縮刷蔵』の校訂成果を借用し校閲を進めた『大正蔵』は,疑問や不明なところについて,全て確かめるのではなく,五分の抜き取りという形で校勘を仕上げたと推察できるのである.更に,『縮刷蔵』の底本は同じ『高麗蔵』であるものの,『大正蔵』の底本とは異なり,すでに一部の内容が校訂された『高麗蔵』だと推察できる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ