マウスの社会的順位と体重, 副腎, 胸腺, 睾丸, 包皮腺重量との関係

書誌事項

タイトル別名
  • Correlation betwen the weights of body, adrenal, thymus, testes or preputial gland and social rank among mice
  • マウス ノ シャカイテキ ジュンイ ト タイジュウ , フクジン , キョウセン , コウガン , ホウヒセン ジュウリョウ ト ノ カンケイ

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説明

集団飼育における実験用マウスの社会的順位関係を明らかにし, 順位にともなっておこる生理的変化を知るために, 90~120日令の範囲にあるCFW系の雄マウス4匹を一群として同一ケージ内に収容し, 順位決定にいたるまでの経過, 収容後10日目までの順位の移動, 10日目における順位と体重, 副腎, 胸腺, 睾丸, 包皮腺重量との関係について検討したところ, 次の結果が得られた。<BR>1.雄マウス4匹を一群として同一ケージ内に収容した直後から激しい斗争が行なわれ, 早いのでは10~20分おそくとも1~3時間でほとんどの群において順位の決定をみた。しかしいぐつかの群では始めから雄相互間で斗争がみられず, この状態を10日間継続したものもある。<BR>2.斗争行動は, お互い同志の攻撃, 攻撃に対する反撃, 攻撃に対する回避などに分けられ, 優位のものは劣位のものに対して攻撃回数が多く, 劣位のものは優位のものの攻撃に対する反撃の回数が少なく, 攻撃に対して全く反撃しないで逃げまわるばあいもみられた。<BR>優位のものが劣位のものに加える攻撃部位は体の全部に及ぶが, 尾部に対する攻撃が最も多い。尾における咬傷の数や被害の程度は最終日における順位とよく一致した。<BR>3.10日目までの順位の移動については, 収容当時の順位をそのままに維持した群と, 途中で順位の交代をおこした群がみられた。<BR>4.動物の社会的順位は直線型とデスポット型の二つがあり, マウスではデスポット型に属するものの多いことが知られているが, この実験では4匹一群の組を41組について調べたところ, デスポット型を示したのは31組で残りの10組は直線型または無斗争群であった。<BR>5.順位と体重との関係については, 実験開始時の平均体重では順位と関係はないが, 10日目にあたる実験終了時の平均体重では順位がさがるに従って体重の減少する傾向があり, I位とIV位, II位とIV位間で有意差がえられた。ただし, 順位と体重の相関は明らかでなかった。<BR>6.順位と副腎, 胸腺, .睾丸, 包皮腺重との関係については, 副腎は一般に順位がさがるとその重量を増加する傾向があり, I位とII位, I位とIII位, I位とIV位の間に有意差がえられた。胸腺, 睾丸, 包皮腺重量では副腎重量とは逆に順位がさがるに従って, その重量が減少する傾向がみられ, 胸腺重量ではI位とIII位, I位とIV位との関係において有意差がえられ, 睾丸重量ではI位とIV位, 包皮腺重量ではI位とII位, I位とIII位, I位とIV位間に有意差がえられた。体重を1009としたばあいの副腎・胸腺・包皮腺重量の相対値についても同様に, 副腎では順位がさがるに従ってその値が増加し, 胸腺, 包皮腺では順位がさがるに従ってその値が減少する傾向がえられた。<BR>7.順位と副腎, 胸腺, 睾丸, 包皮腺重との関係から実験用雄マウスにおいても社会的順位の劣位のものは優位のものに比べて物理的, 心理的, 生理的ストレスを強くうけているのではないかと推察した。

収録刊行物

  • 実験動物

    実験動物 15 (2), 49-53, 1966

    公益社団法人 日本実験動物学会

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