怒り表出・経験と心臓血管系反応の関連について

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タイトル別名
  • The Relationships between Expressing and Experiencing Anger and Cardiovascular Reactivity
  • イカリ ヒョウシュツ ・ ケイケン ト シンゾウ ケッカンケイ ハンノウ ノ カンレン ニ ツイテ

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抄録

人の心理・行動特性と疾病の関連について多くの研究が行われている。とくに近年、海外では怒り・敵意と冠動脈疾患の関連について数多くの研究が多様な視点から行われている。しかし日本においてそのような試みは十分に行われていない。本研究では、怒り・敵意の次元と心臓血管系反応の関連について調査する事を目的とした。<br>202人の大学生にBuss-Perry Aggression Questionnaire (BAQ) を実施し、そのうちの32人に実験協力の依頼が行われた。安静期測定の後、被験者は鏡映描写器を用いた迷路課題を2回行った。1回目は統制条件で、彼らは通常どおり課題を行った。2回目は対人ストレス条件であり、彼らは課題の遂行中に、「もっと速くやってください」「枠からはみ出さないように丁寧にやってください」「もっと本気をだしてやってください」などの言語刺激が与えられた。またBAQに対する因子分析の結果、「怒り表出」「怒り経験」「自己主張」の3因子が得られ、これらの因子得点を各被験者の怒り・敵意特性得点とみなした。<br>結果、統制条件から対人ストレス条件にかけて、血圧・心拍率が有意に上昇しており、また怒り気分が上昇していた。BAQの3因子と対人ストレス条件から統制条件への心臓血管系の変化値の相関を求めたところ、「怒り表出」は収縮期血圧の上昇と有意に関連していた。また男性の「怒り経験」と平均血圧・拡張期血圧の間に有意傾向の負の相関係数が認められた。<br>これらの結果は、怒り・敵意の次元のうちでも、怒り表出の要素が心臓血管系の賦活と関連していることを示唆している。近年の日本の横断的研究では、怒り表出に関連する因子と冠動脈疾患の関連を述べているが、本研究の結果はこれらの研究成果と一致するものとなった。対人ストレス葛藤に伴うエピソード的な怒り表出が過剰な心臓血管系賦活を引き起こし、冠動脈疾患の発症と関連する可能性が示された。また男性における「怒り経験」と平均血圧・拡張期血圧の間の負の相関係数は実験状況による可能性が推測された。

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