脊髄梗塞症例の機能的予後予測の検討

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【目的】脊髄は脳に比べ、血管の構造上梗塞は起こりにくいとされている.当院では、ここ2年で4例の脊髄梗塞症例を経験した.1例は、現在入院中である.当院で経験した症例と過去の文献を検討し、予後予測の妥当性と予後に向けたPTとしての対応を検討する.<BR>【対象】2007年4月~2008年10月の期間の脊髄梗塞症例4例.<BR>症例1(入院中症例):60歳、男性.胸部下行大動脈瘤人工血管置換術後に発症.病変はTh8-11、脊髄灰白質前方(左優位).左優位の対麻痺.MMT IP2/1、Quad3-/2-、TA3/2.車椅子移乗中等度介助レベル.現時点でリハ期間2か月.<BR>症例2:68歳、男性.腹部大動脈瘤人工血管置換術後に発症.病変はTh11/12以下脊髄円錐部、対麻痺.下肢筋力MMT2.車椅子移乗自立で自宅退院.リハ期間は8か月.<BR>症例3:63歳、女性.大動脈弁閉鎖不全術後4日目、約1時間に渡る心停止後に発症.病変はTh8-12、脊髄前方1/2.対麻痺.下肢筋力MMT1-2.車椅子移乗一部介助レベルで他院へ転院.当院リハ期間は5か月.<BR>症例4:72歳、女性.特発性、後脊髄動脈症候群、Brown-Sequard型.病変はTh11-L1、左後索.感覚性失調症状を主とした左下肢麻痺.発症時は下肢筋力MMT2-3、発症後5カ月でMMT4以上.深部感覚障害は改善傾向も、失調症残存.屋内両松葉杖歩行、屋外車椅子駆動自立にて、自宅退院.入院リハ期間は約2か月半、現在は週1回当院で外来フォロー中.独歩も数mであれば見守りで可.<BR>【考察】文献では、脊髄梗塞において予後不良となる因子として大動脈疾患由来、両側性の障害、発症時の麻痺が重度、女性、梗塞巣が灰白質と白質に拡がっていることなどが挙げられている.また、予後良好因子は、片側性で梗塞巣が前角に限局していること、発症時のまひが軽度に加え、Brown-Sequard型であることが挙げられている.症例2,3ともに予後不良因子のうち2つ以上該当しており、車椅子レベルであった.症例4は、Brown-Sequard型で文献通り予後は良好に推移している.<BR>症例1は、予後良好因子と予後不良因子を併せ持つ症例である.過去の報告より、大動脈疾患由来の前脊髄動脈症候群の症例では、4例中3例が車椅子レベルとなっている.以上から、機能的には何らかの形で歩行可能となるが、実用的には車椅子レベルであると予測する.プログラムとしては、歩行練習を実施しながら、車椅子移乗練習などの車椅子動作練習を中心に立案し、自宅改修等の環境調整についても検討の必要が考えられる.<BR>【まとめ】脊髄梗塞の病因や病変部位、発症時の状態から、ある程度の予後予測ができる可能性が示唆された.PTとして予後を適切に判断し、予後に応じたプログラムの立案・実施と、早期から他職種と連携し環境調整を進めていくことができればと考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), E3P3178-E3P3178, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565825664
  • NII論文ID
    130004581368
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.e3p3178.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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