絶滅危惧植物ユキモチソウ(Arisaema sikokianum,サトイモ科)における性表現と光に対する形態的可塑性,および個葉光合成との関係
書誌事項
- タイトル別名
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- Growth stage and sex related to differences in plasticity of morphology, growth and photosynthesis in response to artificial shade in Arisaema sikokianum Franch. et Savat. (Araceae), a gender-switching forest understory herb, threatened in western Japan
説明
光合成で得たエネルギーを成長・繁殖・貯蔵のいずれにどれくらい振り分けるかは,植物にとって重大な問題である。林床に生育する草本は,弱光下で強いられる低生産環境の下でも成長を維持し,なおかつ繁殖を行わなければならない。ユキモチソウ(Arisaema sikokianum Franch. et Savat.,サトイモ科)は四国と本州の一部にのみ分布する夏緑性の多年生草本で,園芸採取や里山の管理放棄などにより絶滅危惧種となっている。本種は体サイズの増加に応じて可変的に無花・雄・雌のいずれかの性表現に変化する「時間的な雌雄異株植物」である。しかし,本種の成長または物質分配と性表現との相互関係,それらに対する光強度の影響に関する生理生態学的な知見は極めて少ない。本研究では,林床を模した異なる光条件下(相対光量子密度28%,14%,4%)でユキモチソウを2年間にわたって栽培した。そして,1)地上部の成長・形態そして個葉光合成,2)栄養成長・貯蔵器官そして繁殖投資,3)生育期間あたりの個体の成長速度,について光強度に対する可塑性と生育段階または性表現との相互関係を調べた。また,これらに対する生育光環境の経年効果を検討した。光強度の減少にともない,偽茎・葉柄が有意に長くなり,生育段階に関係なく個体の総葉面積も増加する傾向があった。これらの形態の可塑性は,より効率のよい光獲得と,被陰環境下での他種と競争に有利であると考えられる。また,小葉の最大CO2同化速度(重量ベース)は,陰性植物の一般的な値よりも高く,個体の性表現(無性,雄および雌),生育時の光強度,そして結実の有無に影響を受けなかった。一方,小葉における光化学系IIの光利用効率(Fv/Fm)は,相対光量子密度14〜28%の下で生育させた個体において日中に有意に低下していた。このとき,無花個体の光利用効率は有花個体よりも有意に低かった。
収録刊行物
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- 日本生態学会大会講演要旨集
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日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52 (0), 567-567, 2005
日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205690109056
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- NII論文ID
- 130007011418
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可