清酒米麹の異常現象所謂 “すべり麹” について

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  • セイシュ ベイ コウジ ノ イジョウ ゲンショウ イワユル スベリ コウジ ニ ツイテ
  • (第2報) その原因と影響

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説明

(1) 酒造場で発生したすべり麹から分類した細菌を用いて, 実験室的にすべり麹を再現し, この細菌の増殖がすべり麹の原因であることを確認した。なおこの細菌がB.subtilisであることは前報 (1) に述べたとおりである。<BR>(2) この際フラスコ内ですべり麹を再現するためには蒸米の水分が大きな因子となること, 白米の浸漬水中に細菌の胞子を加えておく方法が最も簡便であることなどを知つた。<BR>(3) この方法で調製したすべり麹を分析して次のような事実を認めた。<BR>(i) すべり麹の表面にはB.subtilisの生産する液化型アミラーゼによつて多量のデキストリンが生成され, これが粘りの原因となると推定される。<BR>(ii) すべり麹中の酸量は特に多いことはない。<BR>(4) すべり麹が酒母及び膠中の醗酵に及ぼす影響を考察する実験を行ない次のようなことを知つた。<BR>(i) すべり麹から分離した細菌は清酒酵母及びAsp.oryzaeの何れに対しても抗生物質を生産しない。<BR>(ii) しかし, 酵母の増殖以前に大量の細菌が投入されたときに醗酵が阻害される。また酵母の増殖以前に細菌の増殖が充分行なわれた場合も同様に醗酵が阻害される。<BR>(iii) B.subtilisは麹エキス中で酸を生産しないから, 酸敗膠を生じた例の場合は二次的に汚染した他の細菌が酸を生産したと考えられる。<BR>(5) すべり麹が酒母及び膠中の糖化に及ぼす影響を考察して次のようなことを知つた。<BR>(i) すべり麹中には既に相当量のデキストリンが生産されているから, この麹を投入した直後に酒母及び膠の液中に溶出するデキストリン含量は多い。<BR>(ii) すべり麹の場合には, B.subtilisが液化型アミラーゼを生産すること, 麹菌の発育が不良のため糖化型アミラーゼが不足することなどのために, 酒母のふくれ前ボーメ及び膠の最高ボーメ度は高いが, 直接還元糖がそのボーメ中に占める割合は正常な場合に比較して小さい。<BR>(6) この他, はぜ廻り不良, 香気不良などの点が酒質に及ぼす影響は推察に難くないが, この点についての具体的な実験は行なわなかつた。

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