側面2重体の1例

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • A CASE OF DUPLICITAS LATERALIS SUPERIOR

この論文をさがす

説明

Conjoined twinは2:7あるいはそれ以上に女子に多く、発生頻度はScammon(1925)、 Mudalier(1930)、 Ryden(1934)、 Milham(1966)らによれば1/3000〜1/33500〜1/50000〜1/165710 birthsと各々異るがこれはごく初期の胎児奇型の判定が困難なためもあろうかと考えられる。鈴木は1904年より1947年の間に本邦文献に報告さ加た2重体38例の産科学的統計観察を行ない側面2重体と考えられる症例が4例含まれるとしている。1958〜1971年剖検輯報(日本病理学会編)からは40例が見られ、年々軽度増加の傾向を示し、寄生体や、上顎体等を正確に含めるならば、さらに増加すると思われる。この40例の内訳は男子:7、女子:26、記載なし7で圧倒的に女子に多く、死産児が25例にものぼる。そのうち、側面2重体と考えられる症例はわずか3例で、本症例は稀有な奇形と考えられる。症例:本児の母は28才、2児を有し、胞状鬼胎の手術を受けたことがある。妊娠経過は2ケ月の時風邪にかかり薬局にて風邪薬を内服した以外はとくに異常なく順調に経過した。しかし、妊娠27週で羊水過多症の診漸の下にレ線撮影を行ったところ、双胎奇形が疑われたので人工分娩術を行った。胎児は700g男子で、2腕2頭平行2重体を示し、頭部、顔面、胸椎、胸廓内諸臓器は2対見られ、腹部諸臓器は胃、胆嚢、小腸を除き1対ないし1個であった。叉、無脳症、兎唇口蓋裂、鎖肛などが見られた。心臓の奇形はとくに複雑で、単心房が見られ、2個の心室は互いに交通なく隣接して、肉柱の性状、Cristaの有無などにより右側心室は右室様、左側心室は左室様に見えた。各各の房室弁は2尖弁様あるいは3尖弁様であったが、複雑な癒合、あるいは分裂が見られ、形態学的に同定することは困難であった。各各の室からは2本の肺動脈及び大動脈が出ており、上大静脈及び下大静脈は各各1本づつ単心房の中に開口していた。顕微鏡的には、肺の未発育が顕著で、肺内にはびなん性に未分化細胞が分布し、肺胞内への血管の露出は、厚い肺胞隔のため著しく悪い。肺細小動脈も著しく厚い壁を有し胎生期型の血管の特徴を示す。とくに肺の未熟性は、右児左肺、左児両肺に強く、これは、左右内側胸廓の狭小化と、左肺動脈が細いこと、関係があると考えられた。一方、脳組織に相当するarea cerebrovasculosaは多数の血管に富み、脳膜、脈絡膜のごく一部に大脳皮質の遺残等を含んでいた。考察:Conjoined twinに対する人類の関心は古く、種々の学説が見られる。Potterはembryonic discの分離後にtwinningが生じたら羊膜は1個となり、しかも発育中心が充分離れていない場合、2個体の発育中心軸が共有され、その部位によって種種のconjoined twinが発生するとしている。Zimmermanはtwinning processのaberrationとして説明しているが、blastoderm形成前に生じ、gastrulation後では生じないことは興味深い。動物実験によっても種種の動物にconjoined twinを発生させることが出来るが、とくにinbred Y-strain家兎を用いたChai & Craryの実験はgenetic trans-missionの重要性を示唆している。結語:Conjoined twinのうち平行(側面)2重体はとくに少いもので、本邦でもわずかの報告が見られるにすぎない。本例は27週700g男子人工分娩で出産した平行2重体で、心臓をはじめ種々の複雑な奇形を合併していた。本例は第13回日本先天異常学会総会(広島、昭48年7月12・13日)に於てB-12として示説発表を行なった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ