グリムのメルヒェン『唄う骨』(KHM28)の異質性について : もうひとつのモティーフ

書誌事項

タイトル別名
  • Die Besonderheit des Grimmschen Märchens Der singende knochen (KHM28) : Zur Funktion des Wildschwein-Motivs
  • グリム ノ メルヒェン ウタウ ホネ KHM28 ノ イシツセイ ニ ツイテ モウ ヒトツ ノ モティーフ

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説明

『唄う骨』KHM 28 Der singende Knochenは,殺された者の骨によって真実が明らかとなるお話で,世界中に分布していることが確認されている.これをグリムのメルヒェンのひとつとして意識的に読んでいくと,この話の結末から,読者は安堵感を得ることができるが,どこか切なさを振り切ることができない,という点で,他の多くのグリムのメルヒェンと,読後感が異なることが指摘できる.国の平安のためにイノシシ狩りを求める王,これに名のり出る二人の兄弟,兄弟の確執,真実の証明と遺骨の安置,振り返られることの発端,これらの連鎖する個々のモティーフは,幸せな結末で読者を楽しませるのではなく,どのような悪事も,明るみにでずにはいないことを,読者に教えるものである.獰猛な獣に立ち向かう弟と,それに対置される,ずる賢く生きる兄は,最終的にあるべき姿をとる.この話において,異質な読後感を生み出す源は,グリムのメルヒェンという枠に制限されない,昔語りにある.

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