<依頼論文>指圧治療を地球規模で考える --比較民族学研究における東洋と西洋の二分法の回避

DOI HANDLE オープンアクセス
  • Skrivanic Peter
    PhD Candidate, Anthropology doctoral program, University of Toronto, Canada

書誌事項

タイトル別名
  • <Invited Articles>Worlding Shiatsu Therapy: Circumventing the East-West Dichotomy in a Comparative Ethnographic Project

抄録

社会科学において、アジアの医療は、一方的な「西洋化」で画一化するグローバル化の初期モデルに対する有力な応答として出現してきた。それとともに、そうした医療は、グローバルな文化的流動が多方面にわたっていること、また「西洋の残り」という枠組みのもとに同化され得なかったことが証明されている(Hsu and Hoeg 2002; Scheid 2002)。それでもなお、民族学者や社会科学者がグローバル化するアジアの医療に関する知識の伝達や文化的適応における問題に注意を向けるにつれて、ある特定のパターンが一般的に観察されるようになった。すなわち、アーユルヴェーダや指圧、中国医学などの医療実践は、それらの本場においては急速に合理化されてきた一方で、北米やヨーロッパの文脈においては、しばしば心理学的に分析され、霊的な意味が付与されてきたのである(Barnes 1998; Adams 2002; Taylor2004; Warrier 2009)。そのようなパターン化は非常にもっともらしいが、もしそれが分析的な枠組みとして採用されてしまうと、二分化された東西の差異という点で、グローバルな土壌を構築するオリエンタリスト的な言葉の綾を再刻印する作用を果たすことになるであろう。本稿では、カナダと日本の指圧治療の訓練生を対象とした、筆者自身の多角的な民族学的研究を用いることにより、幾つかの分析的なアプローチを検討する。本研究の分析は「東西の」境界を跨ぐ多角的なフィールドワーク研究における問題に取り組む一助となるであろう。特に、調査現場の中で、あるいはそれ以外の場で生起する多様な差異に注目することによって、比較を再調整する方法について言及する。さらに、筆者のインフォーマントによって明確に示された東洋・西洋の二分法に関する多様な具体例や、それらが継続的かつグローバルに産出され(また変容する)指圧治療にとっていかに鍵となっているかを説明するうえで、Mei Zhan(2009)による「世界的視野から捉える」(worlding)という考え方を用いる。そして、このような方法によって、本稿は、はたして研究者自身が無批判的にそれぞれの分析の中で再現するかどうかは分からないが、彼らが、彼らのインフォーマントにとっての東西二分法のような明らかに推論的な構築物にたいして、敏感であり続けることを可能にするような戦略について述べる。

収録刊行物

  • いのちの未来

    いのちの未来 1 193-216, 2016-01-15

    京都大学大学院人間・環境学研究科 共生人間学専攻 カール・ベッカー研究室

詳細情報

  • CRID
    1390009224839831168
  • NII論文ID
    120005694170
  • DOI
    10.14989/203146
  • HANDLE
    2433/203146
  • ISSN
    24239445
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ