人工股関節置換術後早期の身体機能は術後中期の患者立脚型評価アウトカムの予測因子である

説明

<p>【目的】 人工股関節置換術(THA)における高齢例増加などから、QOL低下の遷延化が懸念され、術後早期から回復期以降の術後中期の身体機能や患者立脚型評価 (PROMs)を見据えてリハビリが実施される。PROMsの1つであるOxford Hip Score(OHS)では、患者が症状を許容できる状態(Patient Acceptable Symptom State:PASS)の報告はあるが、術後中期のOHS PASSを基にした術後早期の目標値は不明である。さらに、高齢例は、PROMs関連因子や術後早期の身体機能目標値は異なる可能性がある。本研究の目的は、術後中期PROMsを基にして、術後早期の身体機能目標値を明らかにし、高齢例の留意点を明らかにすることである。 【方法】 対象は、2012年から2020年に初回THAを施行した733例(男性88例女性645例、年齢65.5±10.1歳、術後経過期間6.1±2.2年)。身体機能は、術後退院時に股関節ROM(屈曲、外転、外旋)、筋力(股屈曲、股外転、膝伸展)、疼痛(VAS)、快適歩行速度(m/秒)を評価した。PROMsは、術後1年以降に疾患特異的指標OHS、身体活動指標UCLA Activity Scale(UCLA AS)を郵送し501名(68.3%)より回答を得た。統計解析は、OHSとUCLA ASを目的変数とした重回帰分析を行い、OHSはROC曲線にて術後中期PASSの42点以上を満たすカットオフ値を算出した。また、75歳以上の高齢群(高齢群)と75歳未満の対象群(対照群)に分類し、二群間比較、歩行速度およびPROMsを目的変数とした重回分析からROC曲線にてカットオフ値を算出した。 【結果】 術後中期PROMsへの負の関連因子は、OHSは歩行速度低下、UCLA ASは高齢女性が挙げられた。OHS関連因子であった歩行速度に対するOHSのPASS42点以上を満たすカットオフ値は、0.9m/秒(AUC=0.72)と算出。歩行速度への負の関連因子として、高齢、ROM低値(股屈曲、股外旋)、筋力低値(股外転、膝伸展)が挙げられ、歩行速度0.9m/秒を満たすカットオフ値は股外転筋力0.5Nm/kg (AUC=0.72)と算出。また、年齢による検討では、高齢群151例、対象群582例に分類。群間比較では、ROMと疼痛は有意差を認めず、筋力は股屈曲(0.5±0.1、0.7±0.0)、股外転(0.4±0.1、0.5±0.0)、膝伸展(0.7±0.1、0.8±0.1)、歩行速度 (0.8±0.1、0.9±0.2)で有意差を認めた。PROMsは、OHS(42.2±0.8、44.8±0.4)、UCLA AS(4.2±0.3、5.4±0.1)で有意差を認めた。PROMs関連因子は、高齢群は、OHSには歩行速度が、UCLA ASには歩行速度と術後経過期間が関連因子であり、対照群は、OHSには歩行速度が、UCLA ASには性別が関連因子であった。なお、歩行速度カットオフ値は、両群で0.9m/秒と算出された。歩行速度への関連因子は、高齢群は股外旋ROMと膝伸展筋力、対照群は股屈曲ROM、股外転筋力、膝伸展筋力が関連因子であった。歩行速度0.9m/secを満たすカットオフ値を算出し、高齢群は膝伸展筋力0.6Nm/kg(AUC=0.72)、対照群は股外転筋力0.5Nm/kg(AUC=0.71)と算出。 【考察】 術後早期より介入可能な因子と目標値を明らかにした。中でもOHSのPASS42点には術後早期では歩行速度0.9m/秒が目標値と算出され、身体機能では股外転筋力0.5Nm/kgを目標とした介入が重要である。年齢を考慮すると、年齢に関わらずPROMsには歩行速度0.9m/秒が目標値であったが、特に高齢例は、PROMsや術後身体機能が低く、PROMsには術後経過期間が関連し、各指標低下遷延を踏まえた継続的介入が必要である。加えて、高齢例に限っては、歩行速度には膝伸展筋力が関連し、目標値0.6Nm/kgと算出され、加齢と共に遅延するとされる歩行速度を高めるには、膝伸展筋力改善の介入が重要である。 【結語】 THA後早期の身体機能は術後中期のPROMs予測因子である。 【倫理的配慮】本研究は、九州大学医系地区部局臨床研究倫</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390021857378108544
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2024.0_104_1
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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