日本の家族計画の経過から学ぶ:経口避妊薬の認可と計画外妊娠を例に

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タイトル別名
  • Lessons to be learned from the pill approval and unintended pregnancy trends in Japan

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リプロダクティブヘルスの中心課題である家族計画について、日本における近年の動向および今後の課題を、途上国への教訓という視点で検討した。経口避妊薬の認可の過程では、有効な避妊方法の必要性は中心課題とならず、様々な社会・政治的影響による議論が続いた。そこで、人工妊娠中絶(以下、中絶)の動向を分析し、幅広い年齢層を対象とした有効な避妊方法の普及と、2001年以降の10代中絶率・比の減少についての分析・検討の必要性が明らかになった。ただし、中絶の統計は計画外妊娠の問題の一端を示すのみであるため、計画外妊娠に関する横断研究を実施した。35-49才女性の約半数が計画外妊娠を経験し、また、出産の22%が計画外妊娠であり、これらが育児困難に関連することが示唆された。以上より、女性のニーズを科学的に把握すること、そして、得られた根拠に基づいたリプロダクティブヘルスサービスの提供が必要であると考えた。<br>日本の経験が活かせる事例としてベトナムでは、家族計画に関して日本と以下5点の共通点が見られる。1)各年齢層に適した近代的避妊方法の使い分けが充分でない。2)中絶が広く受容されている。3)若年の性行動が活発化している。4)計画外妊娠が出産の約20%を占める。5)リプロダクティブヘルスに関する疫学研究の蓄積が十分でない。これらを背景に、両国にて計画外妊娠が母子の健康に及ぼす影響を調べるための縦断研究を実施中である。ベトナム・ホーチミン市医科薬科大学の協力を得て、調査に先行して疫学研究のキャパシティーを向上させる研修を2000年から継続して実施している。途上国支援を考える際、科学的根拠を作り上げるキャパシティーの向上、現地専門家による適切な疫学研究の実施、そして、その結果に基づく保健医療サービスの提供を促進するような支援が重要である。

収録刊行物

  • 国際保健医療

    国際保健医療 21 (1), 53-59, 2006

    日本国際保健医療学会

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