スンダリー・ナンダ物語の諸伝本について

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  • On the Versions of the Story of Sundari and Nanda

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抄録

仏陀の異母弟,難陀の出家を描いたスンダリー・ナンダ物語(SN)は,仏教徒の間で最も愛好された物語の1つであり,物語に関する伝本は南伝,北伝の仏教文献中に広く存在している.本論ではこのうちの,11世紀カシミールの詩人クシェーメーンドラが著した説話集Bodhisattvavadanakalpalata(Av-klp)所収のSNを取り上げ,それと近い関係にあるとされる根本説一切有部律雑事(MSV)所伝のSNとの関係を主として論じた.Av-klpとMSVの所伝は共に馬鳴のSaundarananda,パーリのJataka及びDhammapadattakatha所収のSNには見られない伝承を有しており,両者は大筋では同じ系統に分類することができる.しかし,Av-klpの所伝には,MSVの所伝には見られない記述,或いはMSVの所伝と相違する記述が見られることも判明した.この事実は,Av-klpの所伝がMSVの所伝に基づくものではなく,同系の異なる伝本に基づいて著されたことを示唆している.本論では考察の対象としなかったが,Av-klpの所伝は『仏本行集経』を始めとする漢訳経典中のSNとも密接に関連していると考えられる.

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