坐位リーチ動作時における体幹筋活動と重心動揺との関係

  • 猪又 一志
    新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 佐藤 成登志
    新潟医療福祉大学 理学療法学科
  • 立石 学
    新潟リハビリテーション病院 リハビリテーション部

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【目的】<BR>坐位リーチ動作は,日常生活において非常に多く観察される.そこには,重心移動という要素が関係するが,重心移動のためにはリーチ動作中の上肢の制御だけでなく,体幹・下肢を含めた姿勢制御が必要である.本研究の目的は,坐位リーチ動作における体幹筋活動と重心制御との関係を分析することである.<BR> 【方法】<BR>被験者は健常成人男性10名(年齢22.2±0.4歳)とした.安静坐位,坐位前方リーチ動作(以下,前方リーチ)および坐位側方リーチ動作(以下,側方リーチ)を課題動作とした.計測には重心動揺計(アニマ社製),表面筋電計(ダイヤメディカルシステム社製)を使用した.台上に設置した重心動揺計上で足底を浮かせた端坐位をとり,この姿勢を安静坐位とし,それを基準に前方および側方リーチを行った.その際の重心動揺(総軌跡長,矩形面積,外周面積,実効値面積)とリーチ側と反対側の腹直筋(以下,RA),外腹斜筋(以下,OE),胸部脊柱起立筋(以下,ES)の筋活動を測定し,安静坐位に対する各リーチ動作時の筋活動の差,および各課題動作時の筋活動と重心動揺との関係を分析した.なお、対象者には十分な説明を行い,同意を得た上で実験を行った.<BR> 【結果】<BR>安静坐位に比べ,RAは側方リーチ時(p<0.05)に,OEは前方リーチ時(p<0.05)・側方リーチ時 (p<0.01)に,ESは前方・側方リーチ時(p<0.01)に有意に高い筋活動となった.一方,安静坐位ではESと矩形面積間に有意な負の相関が(r=-0.66,p<0.05),前方リーチ時ではESと矩形面積(r=-0.65),外周面積(r=-0.68),実効値面積(r=-0.78)間に有意な負の相関が(p<0.05),側方リーチ時ではRAと矩形面積(r=0.78),外周面積(r=0.78),実効値面積(r=0.78)との間およびESと外周面積(r=0.74),実効値面積(r=0.72)との間に有意な正の相関が認められた(p<0.05).また,総軌跡長は各課題動作時において各筋とも有意な相関は見られなかった.<BR> 【考察】<BR>坐位リーチ動作では,リーチ側と反体側体幹のグローバルマッスルに大きな筋活動が求められるといえる.一方,安静坐位,前方リーチでは重心の前方移動に対し,主にESが予測的にその姿勢を安定させるために働き,側方リーチでは片側坐骨支持という不安定な条件下におかれ,その際の予測不能な外乱に対応して適切な時期および活動量でRAやESが働くと考えられる.各課題動作において総軌跡長と筋活動の相関がなく,矩形面積をはじめ面積項目では筋活動との相関が認められたことは,今回の被験筋であるグローバルマッスルは粗大運動としての姿勢制御を担うため,微細運動を表す総軌跡長には関係しなかったためと考えられた.<BR> 【まとめ】<BR>近年,ローカルマッスルの脊椎分節運動制御への関与等が報告され,注目されているが,坐位リーチ動作等ではグローバルマッスルに着目する必要性が確認された.

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  • CRID
    1390282680505301504
  • NII Article ID
    130006950830
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.319.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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