骨盤傾斜角が脊柱起立筋の硬度に及ぼす影響

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抄録

【目的】<BR>骨盤傾斜角によって脊柱起立筋の筋活動は異なり、骨盤前傾位では筋疲労、筋スパズムが増大すると考えられる。本研究の目的は、立位姿勢における脊柱起立筋に骨盤傾斜角が及ぼす影響を明らかにすることである。<BR>【方法】<BR>対象は健常男子12名,腰痛はあるが日常生活に支障のない3名(年齢:23.5±2.4歳,身長:170.6±4.8cm,体重:66.3±7.2kg,体脂肪率:19.4±3.2%,BMI:22.6±1.7)。被験者全員に研究の趣旨について十分説明し同意を得た。<BR>脊柱起立筋の硬度計測には高分子計器株式会社製アスカーFP型を使用した。計測開始肢位は治療ベッドの頭側を10°倒し、腹臥位で肩関節外転80°,肘関節屈曲90°,前腕回内・回外中間位にて両前腕を下垂位とした。安静時筋硬度は胸腰椎各分節を3回計測し平均値をとった。硬度計を右側脊柱起立筋に水平に固定し、傾斜が強く固定出来ないTh1からTh8の分節領域は計測部位から除外した。硬度計は事前にアタッチメントの冷たさが硬度に影響しないよう温めて使用した。骨盤傾斜角は、上前腸骨棘、上後腸骨棘を結んだ線と床面との平行線がなす角とした。上前腸骨棘、上後腸骨棘にマーカーを貼り、自然立位(Toe out)、の骨盤矢状面よりゴニオメーターを用いて骨盤傾斜角を計測した。データは骨盤傾斜角と各分節の脊柱起立筋硬度の関連性をSPSS11.5J for Windowsを用い、2変量の相関分析をPearsonの相関係数を用いて統計処理を行った。有意水準は5%とした。硬度計測値の信頼性を検討するために、その一致度を評価する再テスト法を用いた。一致度の指標として級内相関係数(ICC, Intraclass correlation)を用いた。<BR>【結果】<BR>全対象の骨盤傾斜角平均は13.4±4.0°であった。骨盤傾斜角と計測可能であったTh9~L5全ての脊柱起立筋硬度の平均値と相関は、それぞれ以下のとおりであった。Th9: 27.5±8.0(r=0.55),Th10:26.1±8.4(r=0.55),Th11:24.0±7.3(r=0.61),Th12:21.7±6.1(r=0.64),L1:20.7±5.7(r=0.69),L2:18.7±6.2(r=0.66),L3:24.0±7.3(r=0.79),L4:12.1±6.6(r=0.73),L5:9.4±6.1(r=0.57)。硬度計測値のICCは0.9以上であった。<BR>【考察】<BR>今回の研究により骨盤傾斜角と脊柱起立筋の硬度に相関があったことは、骨盤前傾が増強すると脊柱起立筋の疲労、スパズムが増大することを示唆している。理由として、骨盤が前傾するにつれ腰椎前弯、胸椎後弯が増強し腰部では後方靭帯系の緊張を用いることが出来ず脊柱起立筋が過緊張し、また胸椎では脊柱起立筋の伸張が起こることが考えられる。今回は矢状面からの骨盤傾斜角の評価のみ行い、それに伴う脊柱の弯曲の程度、姿勢変化を考慮しなかった。今後はこれらと筋硬度の関係および前額面からの評価とそれに伴う脊柱起立筋硬度の左右差、また骨盤傾斜に働く下肢筋群についても検討していきたい。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0348-C0348, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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