膝立ち位および立位における前方ステップ動作時の筋活動
説明
【目的】膝立ち位での動作は脳血管障害患者をはじめ、運動器(骨・関節)疾患患者などにおいても股関節周囲筋群や体幹筋群の筋活動を選択的に高める方法として用いられることが多い。しかし、膝立ち位に関しては、静的な姿勢保持時の筋活動が報告されているのみであり、動作時の筋活動に関しては不明な点が少なくない。本研究の目的は、膝立ち位と立位での静的および動的な筋活動の違いを明らかにすることである。<BR>【方法】対象は本研究に同意を得た健常者9名(男性5名、女性4名、年齢28±3.53歳[mean±SD])である。測定課題は静的な立位および膝立ち位の保持とそれぞれの肢位からの前方へのステップ動作とした。立位、膝立ち位ともに両上肢を胸の前で組んだ姿勢とし、ステップ時の歩幅はステップ側の股関節の屈曲角度が20°となるよう設定した。計測には表面筋電計(Myosystem1200)、三次元動作解析装置(VICON460)、床反力計(AMTI)を使用した。筋電図は支持側の脊柱起立筋、腹直筋、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、長内転筋、大腿直筋、大腿二頭筋を計測した。静的姿勢では安定した3秒間、ステップ動作では支持側へ荷重が移り始めてから振り出したステップ側の下肢が接地するまでの区間の平均筋活動量を測定し、各筋の3秒間最大等尺性収縮時の平均筋活動量にて正規化した。また、両側の肩峰および上前腸骨棘にマーカーを貼付し、ステップ動作時の肩、骨盤の前額面における側方変位量と傾斜角度を求めた。統計処理は対応のあるt検定を用いた。<BR>【結果】静的姿勢保持の比較では、全ての筋活動において有意差を認めなかった。ステップ動作の比較では、膝立ち位で大殿筋、大腿二頭筋、長内転筋、腹直筋、脊柱起立筋の筋活動量が高値を示した(p<0.05)。また、大腿筋膜張筋は膝立ち位で低値を示し(p<0.05)、中殿筋は有意差を認めなかった。<BR>ステップ動作時の骨盤傾斜角度は、膝立ち位で支持側への傾斜が大きかったが(p<0.01)、骨盤の側方変位量には有意差を認めなかった。肩峰の支持側への傾斜角度および側方変位量は膝立ち位で大きかった(p<0.05)。<BR>【考察】膝立ち位でのステップ動作では、前方への推進力は股関節周囲筋群に委ねられるため、大殿筋および大腿二頭筋の筋活動が高まったと考える。<BR>また、立位でのステップ動作では、膝関節を屈曲させて下肢長を短縮することで振り出しをスムーズに行っているが、膝立ち位では、体幹の固定作用を高めステップ側の骨盤を挙上するとともに、体幹を支持側へ傾けることで動作を行っているため、立位に比べ股関節外転筋の筋活動が低下傾向を示したと考えられる。<BR>膝立ち位での前方ステップ動作では、立位に比べて体幹筋の影響が大きく股関節外転筋群の作用が小さいという立位とは異なる制御が行われているが、大殿筋や大腿二頭筋の筋活動を高めるのにより効果的であることが示唆された。<BR><BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), A0639-A0639, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543700864
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- NII論文ID
- 130005013489
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可