中学生サッカー選手に対するストレッチング指導

  • 福原 隆志
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻 医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 坂本 雅昭
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻
  • 中澤 理恵
    群馬大学医学部保健学科
  • 猪股 伸晃
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻
  • 中川 和昌
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻
  • 桜井 進一
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻 医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 加藤 和夫
    医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 樋口 博
    医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 川越 誠
    医療法人恵泉会せせらぎ病院附属あさくら診療所
  • 大澤 勇人
    図南サッカークラブ

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Description

【目的】<BR> 中学生年代では成長の影響により筋・腱は柔軟性が低下しやすく,さらにスポーツ活動の負荷が加わることで,腱やその付着部の疼痛,筋の損傷といったスポーツ障害が生じやすい.本研究の目的は,クラブチームに所属する中学生サッカー選手を対象とし,ストレッチング指導が筋柔軟性およびストレッチング実施頻度に与える影響について検討することである.<BR>【対象および方法】<BR> 対象は群馬県内のクラブチームに所属する中学1~3年生76名とし,指導者,対象者および保護者に本研究の目的を十分に説明し,同意を得た上で行った.介入期間は2ヶ月とし,前後に筋柔軟性の測定,ストレッチング実施頻度の調査およびストレッチング指導を行った.筋柔軟性は,日本サッカー協会で用いられている筋タイトネステストの方法を参考に,ハムストリングス,大腿四頭筋,下腿三頭筋,腸腰筋,内転筋,股関節外旋筋について測定した.ストレッチングの実施頻度は, 1週間あたりの実施回数(回/週)および1回あたりの実施時間(分/回)について調査した.また,ストレッチング指導は測定項目と対応した全6筋について,全対象者に対し個別指導を行った.各項目の介入前後の比較は,Wilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意確率を5%未満とした. なお,介入期間中に外傷を生じた対象者のデータは分析対象から除外した.<BR>【結果】<BR> 対象とした76名中,全ての調査・測定および指導が可能であり,外傷を有さない者は43名であった.介入前後の比較の結果,左ハムストリングスが69.2±8.3度から73.7±8.7度(p<0.05),左股関節外旋筋が35.9±8.8度から41.0±8.1度(p<0.01),右股関節外旋筋が35.6±8.9度から41.6±9.2度(p<0.01)と増加し有意差を認めた.一方,左下腿三頭筋は36.7±4.9度から30.9±8.6度(p<0.01),右下腿三頭筋は38.0±5.1度から31.3±8.0度(p<0.01)へと低下し有意差を認めた.また,ストレッチング頻度では2.7±2.6回/週から4.2±2.1回/週(p<0.01),時間では6.3±6.7分/回から9.9±6.8分/回(p<0.01)へと増加し有意差を認めた.その他の項目について有意差は認められなかった.<BR>【考察】<BR> ストレッチング指導の実施にも関わらず下腿三頭筋において筋柔軟性に低下が認められた要因として,ストレッチングの実施および指導方法の問題,測定時期による影響,成長による影響などが考えられる.また,介入後の実施頻度には増加がみられたものの,日常的に十分なストレッチングが実施されているとは言い難い.成長期のスポーツ選手においては自己管理能力の低い者が多いと考えられ,障害予防においては指導者,保護者が積極的に選手の体調を管理するとともに,選手にとって症状を伝えやすい環境づくりに取り組む必要があると考えられる.

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