カザフスタン・イリ川中流域の河川地形形成年代とその発達

書誌事項

タイトル別名
  • The age and Evolution of Fluvial Landscape in the Middle Basin of Ili River, Kazakhstan

説明

中央アジア乾燥地域を流れるイリ川は,上流域の天山山脈から末端湖であるバルハシ湖に流下し,バルハシ湖を涵養するのに必要な水の80%を供給している.その流域における完新世の古気候に関してはバルハシ湖,および天山山脈において研究成果が近年発表されている。一方でイリ川中流域の古気候変動に関しては研究が少ない.清水ほか(2012)はイリ川中流域の地形面分類を試み,分類された地形面に残存する旧流路を中心に現地でトレンチを掘削し,河川堆積物の採取と年代測定を行い,地形面の形成年代を求めた.しかし,その年代値の数は未だ少なく,さらなる詳細な研究が必要な状況であった. 本発表においてはイリ川の中流域において最近実施した年代測定結果を踏まえ,地形発達史を報告し,中央アジア乾燥地域における完新世のグローバルな気候・水文環境変動との関係を議論する. イリ川中流域の地形面は段丘化したT1面,T2面,T3面,および現在の氾濫原に分類される.その中でT2,T3面上においては旧流路上にトレンチを掘削し,T3面で掘削したトレンチからは貝化石試料を得た.年代測定結果の結果,清水ほか(2012)ではT3面の形成時期を2ka-500aと推定したが,T3面の形成時期を3ka-300aと見積もることができた.T2面上の旧流路から2ka付近の14C 年代測定値が得られていることを考慮すると,新たに得られた年代データは,本流がT2面からT3面へシフトしたイベントが3kaより前に発生し,その後もT2面上の旧流路は増水時などに間欠的に湛水した可能性が高いことを示唆している. T1面上では風成の砂丘が発達しており,現在は植生がついている.T2面,T3面においても砂丘は存在するもののその規模はT1面の砂丘に比べて小さい.T1面の形成された更新世最終氷期頃に活発であった砂丘形成作用がT2面以降の面が形成される3ka以降に衰えたことを示す.また清水・須貝(2010)でT3面上のイリ川本流旧流路の蛇行波長を計測し,当時の古流量解析を試みた.その結果,T3面形成時は現在のイリ川より流量が多かった可能性を指摘した.また,T3面上の旧流路沿いには放棄された中世の遺跡が存在しており(J.-M. Deon et.al., 2012),T3面内においても流路位置の変化による水文環境変化が示唆される. まとめると,当地域においては,大砂丘の発達を促した更新世の乾燥気候が湿潤化し,T3面の形成される3ka以降,河川の地形形成と風成砂丘形成が同時に行われ,流路沿いでは前者が,流路が離れると後者が卓越する関係が続いてきたこと,この間に現在よりもやや湿潤で前者が優勢だった時期があった可能性があること,を指摘できる

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672188544
  • NII論文ID
    130005490064
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100275
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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