組み立て式「近世」という空間の話 : 『東海道名所図会』私語(<特集><近世>という空間)

書誌事項

タイトル別名
  • Fabricated Modernity : The Space of Tokaido-meisho-zukai(<Special Issue>The Space of the Early Modern Age)
  • 組み立て式「近世」という空間の話--『東海道名所図会』私語
  • クミタテ シキ キンセイ ト イウ クウカン ノ ハナシ トウカイドウ メイショ ズカイ シゴ

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説明

秋里籬島という怪人物が編纂した『東海道名所図会』(寛政九年刊)は、他の一連の「名所図会」と違って、一つの狙いがあった。既に言われていることだが、東国江戸に対して皇都京の文化的優越性を示すことだが、これを東海道五十三駅およびその周辺の地誌・歴史・景観・歓楽のガイドブックとして、巧妙に内容を組み立てる形でやってのけた。禁裡御用絵師と上方文人が適宜にコーディネートされ(豊富な資金が謝金として準備され、惜しみなく使用されたようだ)江戸の二重王権があばかれる端緒ともなった。なかんずく東海道・江戸・日本のポイントとしての「富士山」の扱いに、籬島は二転三転、苦心した形跡がある。秀峰富士の形式的通俗的美化と国粋化に反発した上田秋成は、火山富士の醜悪かつ凶暴な一面を指摘した。秋成の一文は、籬島に求められ、内容のために突っかえされたもので、ひょっとしたらあったかも知れない。ただし、この件は何の根拠もない。しかし、面白い対立ではないか。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 53 (10), 22-32, 2004

    日本文学協会

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