トマトサポニンの機能性と反応

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Function and Reaction of Tomatosaponin

抄録

<p>1. 研究経過と今回の研究目的</p><p> トマトサポニンesculeoside A (1)は, 2003年野原らにより見出された成熟トマトの圧倒的主成分(水抽出で糖を除いた成分のTLCでは、トマトサポニンのほぼ一点のみを示す)で, その構造が明らかにされた1-4). これまではトマトの有効性と言えば, すべてリコピンのみで説明されていたが, トマトサポニンは, リコピンの4,5倍含有され, その薬理効果の解析が待たれる.</p><p> </p><p> Esculeoside A (1)</p><p> 私達は, まずトマトサポニンesculeoside A (1)が,ApoE欠損マウスに対して抗動脈硬化作用を示すことを報告した5). 次にトマトサポニンを主成分とする健食を開発, それを摂食した人のデータを集めると, 降圧作用, 抗血糖上昇作用, アトピー性皮膚炎への有効性を示すことが明らかになりつつある. 目下これらの動物実験も行ないつつある. </p><p> 今回は, これまでの知見を総括すると共に, 加工食品(トマト缶詰, ピューレ, ボトルジュース)中にトマトサポニンの存在を明らかにし6,7), さらにトマトの健康科学へ寄与するメカニズムを示唆すべく, 最近見出したトマトサポニンの興味ある化学反応について報告する. </p><p>2.トマト缶詰, ピューレ, ボトルジュース中のトマトサポニン</p><p> 本邦産の種々のトマト(桃太郎, ミデイ, ミニ等), ヨーロッパ産(ドイツ, イタリア, オランダ, トルコ等), 黄色や黒のトマト, これまでに調べたすべてのトマトはesculeoside A (1) を主成分とする. しかし、イタリア産輸入缶詰, ピューレ, 本邦各地産のボトルジュースには, esculeoside Aを含有せず6), その異性体7,8)に相当するesculeosides B-1 (2) ならびにB-2 (3)を主成分として含有することを明らかにした9). 缶詰中のそれらの含量はそれぞれ0.0052, 0.0068%であった. そして新規サポニンesculeoside B-1 (2)の構造を3-O-b-lycotetraosyl (5S,22R,23S,25S)-22,26-epimino- 16b,23-epoxy-3b,23,27-trihydroxycholestane 27-O-b-D-glucopyranosideと決定した.</p><p> また, esculeoside A (1)を水のみで長時間 (6.5 hr) 煮沸還流すると, ほぼ定量的にesculeoside B-1 (2)ならびにB-2 (3)に変換されることが判った. 本反応はspirosolane typeのステロイドサポニンを, 天然では最初の例となるsolanocapsine type10,11)のサポニンへの変換で, これでesculeoside Aとesculeoside Bが化学的に関連付けられ, esculeoside Bの薬理作用の道も開かれた. 本事実から缶詰, ジュース等の製造過程で熱処理する際にesculeoside Aがesculeoside Bに変換されるものと考えている.</p><p> </p><p> Esculeosides B-1 (2, 22R, 23S) and B-2 (3, 22S, 23R)</p><p>3.トマトサポニンのステロイドホルモンPregnane (5)への変換反応</p><p>反応1: 先にesculeoside A (1)を2 N H2SO4-MeOHで加水分解して得られるesculeogenin A (4)を, まずpyridineで, 続いてaq. pyridineで煮沸還流すると, E, F環が一挙に分解し, ホルモンのpregnane誘導体、3b-hydroxy-5a-pregn-16-ene-20-one (5)が得られることを報告した (Chart 1) 12,13). 本反応は画期的な反応で、spirosolane骨格の23-OH基が反応のtriggerになっているものと考えられる (Chart 2). 本反応はトマトサポニンが体内でpregnaneに代謝されること</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282681055595648
  • NII論文ID
    130006470709
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.55.0_posterp-4
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ