インド密教における大自在天の住処――『ブータダーマラ・タントラ』のekliṅgaの記述を中心にして――

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タイトル別名
  • The Dwelling Place of Maheśvara in Indian Esoteric Buddhism: Focusing on Descriptions of <i>ekaliṅga</i> in the <i>Bhūtaḍāmaratantra</i>
  • The Dwelling Place of Mahesvara in Indian Esoteric Buddhism : Focusing on Descriptions of ekalinga in the Bhutadamaratantra

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抄録

<p>漢訳密教経軌中において,「大自在天祠」や「大自在天廟」或いは「大自在天宮殿」という訳語を以って各修法の場を表現する箇所が見られる.本論文は,これらの訳語がいかなる場を指しているのか,そしてまた密教行者がどのような意図を以ってこれらの場を説いたのか,ということを明らかにすることを目的とする.これを明らかにする方法として,仏教版とヒンドゥー教版とで近似する内容を備える『ブータダーマラ・タントラ』(Bhūtaḍāmaratantra)を中心としたいくつかの密教経軌に言及される,以上に関連する記述を挙げ,その訳語の示す対象と,修法の傾向を見ていく.当文献内での上記の漢訳語はekaliṅgaに対応している.当文献の一つの文脈においてekaliṅgaとMahādeva(シヴァ神)が関連付けて描かれており,「大自在天」という漢訳と結び付けられているekaliṅgaはシヴァリンガのある場所を指しているものと推測される.また,『文殊師利根本儀軌経』(Mañjuśriyamūlakalpa)内にも,ekaliṅgaにおける修法が言及されており,この記述においてもこの語はシヴァリンガのある場を指していると考えられる.加えて,両文献の修法はリンガを踏みつける行為を伴っており,類似の修法は他の密教経軌にも見られる.以上より仏教の密教行者が頻繁にヒンドゥー寺院に赴き修法を行っていたという状況が推察される.また,ekaliṅgaという単語は後世のヒンドゥー文献内にも見られ,「一定の範囲(5クローシャ)に一つだけリンガがある場所」として明確に定義されている.</p>

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