製造業職場の禁煙化 10年で喫煙率30%減の成果

説明

はじめに<br>  私が工場の禁煙化を何とかしたいと思ったのは今から10年前のことである。当時の男性社員の喫煙率は62.0%(2000年調査)であり、国民健康・栄養調査47.4%と比較しても極めて高かった。食堂や工場の休憩室はたばこの煙が立ちこめ、室内の掛け時計や電話などは黄色にヤニが付着していた。トイレの個室にも一つずつ灰皿が付けられ、禁煙化についての発言に対しては「生産性優先」「時期尚早」「喫煙者の権利」「職場の不和」と強く反発された。<br>  しかしながら、当時約500名の塵肺有所見者・脳卒中・心筋梗塞・癌・高血圧・糖尿病・胃潰瘍治療中の職員の喫煙率は、ほぼ100%であった。なんとかしなければとの思いを強くしていたものの、一人、無力感に襲われていた頃、禁煙アドバイザー育成講習会を受講した。そこで講師の高橋裕子先生から「禁煙支援は一緒に楽しく」、禁煙マラソン卒業者からは「再喫煙の誘惑はきついが、励まし合いながらの禁煙は楽しくいろいろな良いことが起こる」と知らされた。禁煙指導は喫煙者から煙たがれるもの、と思い込んでいた私には、楽しい禁煙とはまさに「目からうろこ」の感があった。<br>  これを機にKK(禁煙健康ネット)メーリングリストにて禁煙支援者同士の交流とタイムリーな情報を得ることができるようになり、2008年に禁煙支援看護師の認定も受け、「エビデンスを基に楽しく応援」という禁煙支援にすっかりはまって現在に至っている。<br>  職場での禁煙化の基本は情報提供・禁煙支援・環境整備の3つの柱であり、職場内で情報提供・禁煙支援・環境整備を繰り返すことにより喫煙率を下げてきた経緯について報告する。

収録刊行物

  • 禁煙科学

    禁煙科学 vol.4 (06), 2-5, 2011

    日本禁煙科学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390289920609699584
  • NII論文ID
    130008110990
  • DOI
    10.32213/jascs.vol.4.06_2
  • ISSN
    18833926
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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