RNAを標的とする低分子創薬の進展

DOI
  • 古川 和寛
    徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生物有機化学分野
  • 南川 典昭
    徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生物有機化学分野

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抄録

RNAは,現在の生命科学研究の大きなターゲットとなっている生体分子である.触媒作用を持つRNA分子であるリボザイム,二本鎖RNAがmRNAを特異的に分解する現象であるRNA干渉(RNA interference:RNAi),タンパク質に翻訳されない非コードRNA(non-coding RNA:ncRNA)の発見により,RNAが生命の起源であるというRNAワールド仮説までもが提唱されるようになっている.これらの様々な新機能の発見に伴い,RNAは新規創薬標的としての注目を集めている.RNAを標的とする創薬では,RNAiを利用するshort interference RNA(siRNA)などの研究開発が盛んであるが,本稿ではRNAを標的とした低分子創薬に焦点をあてて解説する.<br>RNAを標的とする低分子創薬の歴史は意外と古い.ストレプトマイシンやカナマイシンに代表されるアミノグリコシド系抗菌薬は,細菌のリボソームRNA中の40残基程度の小領域に結合し,翻訳を阻害することで細菌の増殖を抑える.またアミノグリコシド系抗菌薬は,エイズウイルスのtrans-acting responsive sequence(TAR)およびrev responsive sequence(RRE)領域のバルジ構造に結合することで,ウイルスゲノムの転写・翻訳を抑制することも知られている.<br>本稿では,主に細菌に存在し代謝産物などのmRNAへの結合によって遺伝子発現を制御する「リボスイッチ」と,ほ乳類細胞に存在し遺伝子発現を制御する短いRNA(23残基程度)である「マイクロRNA(microRNA:miRNA)」に焦点を絞り,これらを標的とする創薬展開の実例を紹介する.

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 51 (1), 47-51, 2015

    公益社団法人 日本薬学会

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