表層崩壊にともなう水路頭の移動と1次谷流域堆積物の年代の関係

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タイトル別名
  • Colluvial deposits in first-order streams and channel head migration by shallow landslides
  • Case study at granitic basins, Asaminami-Ku, Hiroshima, Japan
  • 広島県広島市安佐南区の花崗岩流域の事例

抄録

近年豪雨による土砂災害が頻発し,地形学的知見に基づく災害予測は重要な課題として位置づけられるようになった.発表者らはこれまで,崩壊前の微地形,特に水路頭の位置と表層崩壊の発生とのかかわりについて研究を進めてきた.本研究では2014年8月に土砂災害が発生した広島市安佐南区緑井の花崗岩流域を対象として,豪雨に伴う水路頭の移動と1次谷堆積物の年代の関係について検討した.<br><br> 対象地域において崩壊前後に取得された解像度1 mの数値標高モデルにより,崩壊前および崩壊後の水路頭の位置を判読し,それぞれ集水面積と局所傾斜(水路頭上流約10 m区間)をGIS上で測定した.崩壊発生後の水路頭における傾斜と集水面積の関係を図1に示す.崩壊非発生の水路頭では2つの地形量の間に明瞭な関係がないが,崩壊が発生した水路頭では両者に明瞭な負の相関関係がある.また,6つの水路頭の崩壊発生前の集水面積(図1中の*印)は,非崩壊の水路頭に比べて大きい傾向があった.<br><br> 谷頭凹地で崩壊が発生した6か所の1次谷のうち3か所を対象として詳細な現地調査を行った.これらの1次谷はいずれも土石流の発生源となった.2か所の1次谷(A,B)では,崩壊に伴って水路頭の位置が大きく移動した.崩壊前の集水面積は大きかった(1次谷A: 8700 m2,B: 11000 m2)が,崩壊に伴ってその上流側に新たな水路頭(集水面積A: 1100 m2,B: 4400 m2)が形成された.また,崩壊後の水路頭直下のガリー壁に木炭を挟む土層を確認した.この土層から採取された木炭の放射性炭素年代は1次谷Aにおいて1162–1194 y BP(2試料),Bにおいて786 y BP(1試料)であった.1次谷Cでは崩壊前に水路頭が存在していた地点(集水面積1900 m2)の直上(集水面積1500 m2)において表層崩壊が発生した.1次谷Cの水路頭直下の土層から採取された木炭の年代は670 y BP(1試料)であった.<br><br> 2014年の崩壊地直下に露出した土層は前回の崩壊イベント以降に堆積した谷頭凹地堆積物であると考えられるので,古い年代を示した1次谷Aの崩壊周期は比較的長く,相対的に新しい年代を示した1次谷Cの崩壊周期は比較的短いことが想定される.この観点からみると,崩壊周期が長くなると,前回の崩壊で生じた凹地がより下流まで埋まるので,1次谷における豪雨前後の水路頭位置(集水面積)の変動量も大きくなると考えられる.ただし,対象とした1次谷が現時点で3か所しかなく,年代測定のデータ量は十分ではない.今後対象地域のさらなる記載・分析を進めるほか,他の1次谷についても分析を行い,崩壊予測につながるモデルの構築を試みる予定である.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238095284096
  • NII論文ID
    130007628394
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_139
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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