変形性股関節症患者における中枢性感作に関する調査的研究
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- 日野 大輔
- 久留米大学医療センター
説明
<p>【目的】</p><p>従来、慢性疼痛の原因は関節や靭帯、筋、神経といった構造的破綻に起因し発生するという考えが一般的であった。しかし、中枢神経系の機能低下や患者の心理・精神・社会的背景が慢性疼痛へ影ある一定の影響を及ぼしていることが明らかにされてきた。中枢性感作(Central sensitization:CS)は中枢神経系の過度な興奮状態による神経生理学的な状態とされ、痛みのみならず、抑うつ、不安、睡眠障害、疲労などを誘発すると言われている。近年、このCSのスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory(CSI)が開発され、臨床での有用性が報告されている。例えば、人工膝関節置換術前にCSIスコアが高いと三ヶ月後の予後が不良であることも報告されいる。従って変形性関節症においてもCSが関連している可能性がある。しかしながら、変形性股関節症におけるCSの報告は少ない。そこで今回、変形性股関節症患者のCSに関し横断的に調査し、他の疼痛の質的評価との関係性を検討した。今回、神経障害性および非神経障害性疼痛を対象とし、痛みの感情的、感覚的、評価的な側面を持つ総合的な痛みの質的評価であるShort-Form McGill Pain Questioner(SF-MPQ-2)、痛みの破局化の程度を評価する指標であるPain Catastrophizing Scale(PCS)、痛みに対する不安や恐怖から運動や行動を極端に制限する誤った思考(恐怖回避的思考)を評価するTampa Scale for Kinesiophobia(TSK-J)を用いた。</p><p>【方法】</p><p>対象者は当院入院中の変形性股関節症患者 86名(男性13名、女性73名、平均年齢68±13歳)とした。対象はCSIのカットオフ値を基にCS群、非CS群とした。疼痛関連質問指法である評価項目はSF-MPQ-2、PCS、TSK-Jを用い評価を行い、比較を行った。群間比較はWilcoxon順位和検定を用いた。</p><p>【結果】</p><p>CS群6名、非CS群80名で、変形性股関節症患者のCSの関与が疑われる症例は全体の6%であった。CS群は、PCS(中央値35.5vs25.5点)、SF-MPQ-2(中央値67.5vs29点)において非CS群より有意に高く、年齢(中央値35.5vs25.5点)、TSK-J(中央値45vs40点)との間に有意差は認められなかった。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果、変形性股関節症患者の疼痛におけるCSの関与が疑われる症例は全体の6%であった。また、CS群のPCS、SF-MPQ-2スコアは非CS群よりも有意に高値ということが明らかになった。これは、CSの特徴でもある抑うつや破局的思考、痛覚過敏による高い疼痛の程度をPCSとSF-MPQ-2が反映した為だと考える。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り行われた。また、事前に対象者からデータを使用する事への同意を得た上で、個人情報保護など十分な説明を行い実施された。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士学術大会誌
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九州理学療法士学術大会誌 2019 (0), 93-93, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390565134803556480
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- NII論文ID
- 130007760778
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- ISSN
- 24343889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可