日本の相続法における単純承認と限定承認に関する研究

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タイトル別名
  • A Study on Simple and Limited Approval in Japanese Inheritance Law
  • ニホン ノ ソウゾクホウ ニ オケル タンジュン ショウニン ト ゲンテイ ショウニン ニ カンスル ケンキュウ

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説明

本研究は,日本の相続法における相続の承認について,相続人の保護・救済という視点から諸問題を考察するものである。その焦点は,「単純承認」と「限定承認」の本質にアプローチして,当然相続主義(=包括承継主義)の問題点を明らかにするということである。|我が国の相続法の基本原理は,当然相続主義に基づき,単純承認を本則としているため,相続放棄や限定承認は例外として位置付けられている。一方で,民法は相続の強制を禁止しており,相続人に選択権を認めている。例えば,相続人は単純承認することだけでなく,熟慮期間内(相続開始後3か月以内)であれば,単独で家庭裁判所に「相続放棄」の申述をすることができるし,相続人全員が共同して「限定承認」を申述することもできる。|本論で検討することは,次に示す三つの論点である。|第一に,熟慮期間(=考慮期間)が「3か月」で,それを経過すると単純承認となるというのは,法律関係の早期安定(=法的安定性)が目的であるとされている。しかし,現代の核家族の進展と複雑な経済関係の中で債務を含めた相続財産をすべて調査して,相続放棄や限定承認をするかどうかを決断するためには,かなりの期間と労力が必要である。そのため,相続人保護の観点から少なくとも「6か月」以上に変更することを提案する。|第二に,単純承認を本則とした場合には,相続債権者の保護は配慮されるけれども,相続人の保護・救済は困難になることを論述する。特に未成年者などの制限行為能力者の保護に欠けることを指摘する。単純承認については「意思表示説」・「法定効果説」・「折衷説」三つの学説を検討し,法理論としては相続の意思を擬制(推認)する意思表示説が妥当ではないかという私見を述べる。|第三に,立法論として「限定承認原則論」に立って法改正をすべきではないかという問題を提起する。具体的には「相続人は被相続人の債務につき,相続によって得る遺産に限定して,弁済責任を負う」という民法規定を置くことである。これは,個人責任(=個人承継)という近代的な相続法の観点から相当の説得力があるのではないだろうか。

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