クロザピン血中濃度変動と薬物動態関連因子の一塩基多型の関連解析

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<p>【目的】治療抵抗性統合失調症(TRS)治療薬であるクロザピン(CLZ)の血中濃度の有効域は350~600 ng/mL(トラフ値)1とされ、1000 ng/mLを越えると重篤な有害事象の発現リスクが上昇する。これを回避するために治療薬物モニタリング (TDM)による薬物治療管理が求められる。CLZの代謝にはCYP1A2や3A4が寄与するが、その他の代謝酵素やトランスポーター(薬物動態関連因子)の関連が不明であり、これまでにもCLZ服用患者の薬物動態関連因子の一塩基多型(SNP)が解析されてきた。Akamineら2は、CLZ血中濃度/投与量(C/D)の上昇とABCG2 (421C>A) の関連を報告したが、解析された薬物動態関連因子およびSNPの種類は少ない。そこで、本研究では、CLZのTDMに有用な知見を得るために、CLZのC/Dの変動における薬物動態関連因子のSNPの関連を網羅的に調べることとした。</p><p>【方法】東北大学大学院医学系研究科倫理委員会に承認された研究計画(承認番号2022-1-590、2022-1-832)に基づき、同意の得られた患者10名から血液を採取した。CLZ血中濃度は液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法3で測定した。薬物動態関連因子(代謝酵素7種、トランスポーター7種)のSNPをサンガーシークエンス法で解析した。</p><p>【結果・考察】CLZ血中濃度解析の結果、トラフ値が治療域を上回った症例は3例であった。CLZのC/Dの平均値は1.7であり、既報4と同等であった。SNP解析の結果、C/D高値はABCG2 (421C>A)2のみでは説明できなかった。一方、肝臓に発現する薬物トランスポーターに機能欠損を伴うSNPが認められた患者において、CLZ血中濃度およびC/Dが高値となる傾向が見られた。</p><p>【結論】本研究で初めて肝臓の薬物トランスポーターのSNPがCLZの血中濃度変動に関連する可能性が示された。</p><p>【参考文献】</p><p>1. Hiemke C. et. al., Pharmacopsychiatry, 51: 9-62, 2018. </p><p>2. Akamine Y. et. al., Ann. Clin. Biochem., 54: 677-685, 2017. </p><p>3. Sato T. et. al., Biomed. Chromatogr., 35: e5094, 2021. </p><p>4. Yada Y. et. al., Acta Psychiatr. Scand., 143: 227-237, 2021.</p>

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