-
- 中井 孝章
- 大阪市立大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Relevance between Children's Desire for Self-recognition and Expetation and Recognition from Parenrts : Child Research from a Standpoint of Post-humanism
- コドモ ノ ジコ ショウニン ヨッキュウ ト オヤ カラ ノ キタイ ト ショウニン ノ カンレンセイ ポストヒューマニズム ノ タチバ カラ コドモ ケンキュウ
この論文をさがす
説明
一般に、子どもは、家族、他者(異性)、学校による承認を通して自己承認を行いながら成長発達していく。とりわけ、家族的承認は、子どもの存在の意味を無条件に受け入れるという意味で、それ以外の承認と比べて、より無条件的であり、より根源的であるがゆえに、それなしに子ども自身の十全な成長発達はあり得ない。その意味で家族的承認は、学校・社会からの承認(社会的承認)の土台となる。ところが、現在、家族的承認が本来、学校・社会から受ける交換価値の承認に近づくその一方で、社会的承認が本来、家庭から受ける意味(価値)の承認に近づくといったねじれ現象が起こっている。つまり、現在、親と学校の役割が逆転しつつあり、そのため、親は過度に子どもに対して期待を持ち、口出ししていると考えられる。そして本論文では、子どもが承認を得るために親から受ける期待について小学生へのアンケート調査研究を通して分析・解明したが、その主な知見は次の通りである。なお、主要な調査項目である「親の子どもに対する期待」は、「他者を思いやることへの期待」、「上を目指すことへの期待」、「普通に生きていくことへの期待」に分類した。(1)いまの親は、子どもに対して、「他者を思いやること」を何よりも期待し、その次に従来のように、「上を目指すこと」を期待しており、「普通に生きていくこと」、すなわちごく普通の大人の能力や資質を身につけ、人並みに人生を送ることについて、あまり期待をもっていない。(2)親からは成績に如何を問わず、他者への配慮を求める「思いやる期待」が高く、成績が上位者である者ほど、上を目指すことへの期待を感じている者が多くなる。(3)「上を目指すことへの期待」を親から期待されていると感じている子どもは、子どもなりに応えようとし、親から期待されていないと感じている子どもは(期待通りに)まったく応えていない。(4)子どもに対して他者への思いやりを期待しているにもかかわらず、子ども自身はその期待にほとんど応えていないと感じている。(5)文化資本の多い家庭は、子どもへの期待をほとんど言わないのと比べて、文化資本が相対的に少ない家庭は、子どもへの期待の表し方を明確にしている。(6)生活に不満を持っている親の場合、特に母親が子どもに対して多く期待をかける傾向があるのに対して、生活に満足している親の場合、特に父親が子どもに対して期待を多くかける傾向がある。以上のことから、子どもは、本来、家庭では無条件に認められるはずの自分の存在を認めてもらうために、自分が何を期待されているのかを敏感に察知し、その期待に応えようと必死になっていることがわかる。本来ならば、親は子どもを無条件に承認し、その上で、学校・社会が「他者を思いやること」や「上を目指すこと」を期待し、承認するはずである。しかし、いまの親は子どもに対して「他者を思いやること」を何よりも期待し、次に「上を目指すこと」を期待している反面、「普通に生きていくこと」、すなわちごく普通の大人の能力や資質を身につけ、人並みに人生を送ることについて、子どもにあまり期待をもっていないことがわかった。
収録刊行物
-
- 生活科学研究誌
-
生活科学研究誌 6 113-137, 2008-03
『生活科学研究誌』編集委員会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390853649850424576
-
- NII論文ID
- 120006006380
-
- NII書誌ID
- AA11847609
-
- ISSN
- 13486926
-
- 本文言語コード
- ja
-
- 資料種別
- departmental bulletin paper
-
- データソース種別
-
- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可

