<研究ノート>日蘭英史料にみる朱印船貿易家木屋弥三右衛門の活動と人物像

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  • The Activities and Reputation of Kiya Yasaemon, a Vermilion Seal Trader, in Japanese, Dutch and English Sources
  • ヒ ランエイシリョウ ニ ミル シュインセン ボウエキカ モクヤヤサン ウエモン ノ カツドウ ト ジンブツゾウ

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抄録

本稿では、近世初期の堺の商人で、朱印船貿易家として知られる木屋弥三右衛門について、日蘭英史料にみられる情報から、その活動と人物像を掘り起こした。 日本側史料として、当時、外交関係実務を担当していた金地院崇伝の書き残した「異国御朱印帳」、「異国渡海御朱印帳」、「異国日記」を収録した『影印本異国日記―金地院崇伝外交文書集成―』を主として用いた。また、海外史料としては、平戸オランダ商館と平戸イギリス商館に関連する史料を用いた。これらの日蘭英の史料から弥三右衛門に関してみられる記述を拾い出したうえで、それらの記述を相互に関連付けながら精査し、情報整理をおこなった。 その結果、オランダ側史料にみられる「Jassemondonno」が木屋弥三右衛門であること、弥三右衛門が日本とシャムのそれぞれの拠点に駐在するオランダ東インド会社の商館員のあいだで交わされる書状の運搬を渡航時の定例として担っていたこと、さらに、シャムでの貿易や会社船の艤装費用についてもオランダ人へ助言をおこなっていたことなどの事実関係を明らかにした。また、これらの情報からは、弥三右衛門がオランダ人と友好的な信頼関係を築いていたことがわかった。 さらに、畿内で商務活動をおこなっていた平戸オランダ商館の商務員の書状には、1615年に弥三右衛門が家康に拝謁したという、これまで知られていない情報がみられることも指摘した。一方、イギリス側史料からは、日本側史料に記録のないシャム向けの元和3年付の異国渡海朱印状についての根拠となる記述を同定した。 本稿では、弥三右衛門に焦点を当て、その活動と人物像についてオランダ人との関係を軸にひもときながら、堺・長崎・平戸・シャムとのあいだを機動的に行き来して商業活動をおこなっていた弥三右衛門の姿を素描し、当時、国際的に貿易が営まれていた東アジアにおける日本の朱印船貿易家の活動の一側面を浮き彫りにした。

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