哲学・思想・イデオロギー : 戦時日本仏教における空の論理をめぐって

書誌事項

タイトル別名
  • Philosophy, Thought and Ideology : The Logic of ??nya promoted by Japanese Buddhists at War
  • テツガク ・ シソウ ・ イデオロギー : センジ ニホン ブッキョウ ニ オケル ソラ ノ ロンリ オ メグッテ

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説明

昭和の戦争期には日本の仏教者たちも戦争を肯定し、仏教思想を軍国主義的イデオロギーに接続させることをためらわなかったが、中でも印象的な事例の一つは、般若経典の説く「空」の思想を、死を厭わぬ覚悟の重要性と結びつけるというタイプの言説である。「不生不滅」とか「A 即非A」といった仏典の聖句が、生死の区別を超越するあり方を追求するものと解説され、そうして直接、間接に、国家のための自己犠牲を称揚する説教の材料となったのである。当時の思想家たちは、こうした聖句の示す論理が一種の「超論理」であり、深い宗教性の境地である超越性の表現であると説いていた。しかしながら、空の論理に関し、通常の論理を超えた「超論理」的性格を強調することは、結局のところ矛盾を肯定し理不尽を押しつけるということを現実の力関係の中では意味することになり、事実そうなったのである。仏教思想のイデオロギー化というこの種の轍を踏まないために、今日必要なことは、空の論理の超越性ではなく具体性を解き明かすよう努めることであり、他方では、他人に戦場での自己犠牲を説きながら自分は戦場に行かないといった類の欺瞞性が思想一般に付きものの罠であることを認識し、これに用心することである。

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