単球の概日時計機構とビタミンAの毒性に着目とした新規心-腎連関機構の解明と治療薬探索
書誌事項
- タイトル別名
-
- The Relationship Between Heart Failure And Alteration of Circadian Clock in Monocyte: A Novel Cardio-renal Interaction
説明
<p>背景:血圧や心拍数などの循環器機能には概日リズムが認められ、これらのリズムは概日時計機構により調節されている。またこれを反映し、循環器疾患の好発時間や病態進行も体内時計と相関していることが近年報告され、注目を集めている。しかし、その詳細な機序は未解明な点が多い。そこで本研究では、慢性的な高血圧を伴う慢性腎臓病(CKD)を対象に、概日時計機構が循環器及び心臓の病態に及ぼす影響について解析を行った。</p><p>結果・考察:CLOCKは概日時計機構における中核分子であるため、Clock改変マウス(Clk/Clk)の循環器機能は異常なリズムを示す。そこで初めに、野生型マウス(WT)およびClk/Clkを用いてCKDモデルマウス (5/6 Nephrectomy: 5/6Nx) を作製し、血圧、血中Angiotensin II濃度(AT2)、心線維化を比較した。その結果、Clk/Clkにおいて血圧およびAT2はWTより高値を示したにもかかわらず、心線維化は抑制された。この原因解明のため、マイクロアレイ法を用いて(1)正常時に概日リズムが認められ、(2) CLOCKによって発現が制御され、(2) 5/6Nxで発現変容が認められる遺伝子を探索した。その結果、5/6Nx時の単球および心室マクロファージにて発現が顕著に上昇する受容体GPR68を同定し、この受容体の発現抑制が5/6Nxの心臓病態悪化を抑制することを突き止めた。さらに、GPR68の発現上昇を誘導する血中因子を探索したところ、CKD時の血中レチノール蓄積に起因する概日時計機構の変容が、GPR68の発現を誘導することが明らかになった。この発現誘導はCKD患者から採取した血液検体でも認められた。以上の結果より、本研究にて明らかにした機構がCKD患者の心疾患の原因となっている可能性が示唆された1。更に我々はGPR68阻害作用を持つ化合物をハイスループットスクリーニングにより同定し、この化合物がCKD性心不全の改善効果を有することも突き止めた2。</p><p></p><p>1Yoshida Y et al. Nat Commun., 2021.</p><p>2Yoshida Y et al. Trans Res., 2024.</p>
収録刊行物
-
- 日本毒性学会学術年会
-
日本毒性学会学術年会 51.1 (0), P-60E-, 2024
日本毒性学会

