nanoLC-質量分析装置によるボトムアッププロテオミクスを起点とした慢性腎臓病誘発性の認知機能低下機構の原因探索
説明
<p>【目的】慢性腎臓病(CKD)は様々な合併症の危険因子となるが、特に認知症の発症リスクは年齢に関わらずCKD時に増加する。しかし、現状認知機能改善効果を有する治療法は存在せず、またCKD時の認知症発症機構も十分に解明されていない。そこで、本研究では、CKD時に認められる認知機能低下の機構を解明することを目的に、CKDマウス海馬抽出物を対象に、高精度なプロテオーム解析が可能であるnanoLC-質量分析装置を用いたボトムアッププロテオミクスを実施することで原因分子の探索を行った。 【方法】5/6腎臓摘出(5/6Nx)を施し8週間後のICRマウスをCKDモデルとして各種検討を行った。腎機能は、血液中のBUN、クレアチニン値を指標に評価した。CKDマウスにおける海馬タンパク質の定性および定量分析は、nano-LC質量分析装置を用いた。また各種神経系の培養細胞に遺伝子を導入し影響を確認した。 【結果・考察】まず5/6Nxの影響を確認するために、マウスの血液中のBUN、クレアチニン値を測定した。その結果、CKDマウスにおいてBUN、クレアチニン値は高値を示し、実際のCKD患者と同様に腎機能の低下が確認された。次にCKDマウスを対象に、複数の学習・記憶の評価系として受動回避試験、水迷路試験、物体認識試験を実施した結果、このマウスが認知機能を司る海馬の機能低下に伴う記憶学習障害を示すことが示唆された。この原因を探るために、CKDマウス海馬抽出タンパク質を対象に、nanoLC-質量分析装置を用いたボトムアッププロテオミクスを実施した結果、CKDマウス海馬中に因子Xが蓄積していることを突き止めた。この因子Xの各種神経系細胞への影響を検証するため、培養細胞に因子Xを高発現させたところ、因子Xが細胞の細胞死を誘導することが明らかとなった。さらにCKDマウス海馬組織の免疫組織染色を実施したところ、海馬周辺における細胞数の変化が認められた。これらの結果は、CKD患者で海馬の萎縮が認められるという報告と一致している。以上から、CKD誘発性の認知機能障害に因子Xを介した海馬周辺の細胞数の変化が影響を及ぼしている可能性が示された。 【結論】本研究の結果から、因子Xが海馬周辺の細胞死誘導を介して認知機能障害に影響を及ぼしていることが示唆され、本研究がCKD誘発性の認知症に対する新たな治療標的の発見につながることが期待される。</p>
収録刊行物
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- 日本臨床薬理学会学術総会抄録集
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日本臨床薬理学会学術総会抄録集 45 (0), 21-, 2024
一般社団法人 日本臨床薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390869378867579264
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- ISSN
- 24365580
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可