Mecoprop(MCPP)とフェニトロチオンによる農薬中毒の1例(A case of pesticide poisoning by Mecoprop (MCPP) and Fenitrothion)

Search this article

Description

<jats:title>要旨</jats:title><jats:p> 症例は76歳の男性。自宅車庫で嘔吐し倒れているところを発見され救急搬送となった。来院時GCS 5点,強い刺激臭と縮瞳があり,有機リン中毒を疑い気管挿管・胃洗浄・活性炭投与した。病着して1時間経過した頃から平均動脈圧(MAP)60mmHg未満の循環不全を来すようになり,アトロピンと血管収縮薬の持続投与で全身管理を行った。縮瞳以外の有機リン中毒症状は目立たず,第2病日に有機リン定性キットで尿を測定して陰性。第3病日に循環動態は安定傾向となった。第4病日に,ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により胃液と血清からフェニトロチオンと2–(4–chloro–2–methylphenoxy) propanoic(mecoprop: MCPP)が検出された。第24病日に呼吸器を離脱し,第25病日にICUを退室。第45病日に転院した。MCPPはフェノキシ酸系除草剤の1つである。フェノキシ酸系除草剤はアデノシン三リン酸(ATP)合成を阻害するが,これはATP依存性Kチャネルの活性化を引き起こし,敗血症性ショックのときと同様の血管収縮薬抵抗性の血管拡張を引き起こす。MCPP中毒の報告は少なく,本症例のように高度の循環不全を来した報告は本邦ではない。中毒の臨床症状(トキシドローム)として,フェノキシ酸系除草剤は,血管拡張による高度な循環不全を来す物質として認識しておく必要があると思われた。</jats:p>

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top