戦時体制期における軽電機生産の実証分析
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- 長谷川 信
- 研究代表者
- 静岡大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP01530041 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 01530041
- 研究種目
- 一般研究(C)
- 配分区分
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- 補助金
- 審査区分/研究分野
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- 経済学 > 経済史
- 研究機関
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- 静岡大学
- 研究期間 (年度)
- 1989 〜 1989
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 900,000 円 (直接経費: 900,000 円)
研究概要
国策研究会資料の中に含まれていた電波兵器行政査察報告書などの資料によって、太平洋戦争期における軽電機生産の実態を明らかにすることが主要な研究テ-マであった。 行政査察報告書は、東芝軽電機製作所、同通信機製作所、住友通信工業、日本無線、川西機械製作所、松下電器、日立製作所、品川電機、帝国通信工業などの通信機部品メ-カ-の実績を詳細に報告している。その内容は、資材、生産技術、設備、労働力、資材の運搬、経理という多岐にわたる。資材面では、真空管の増産に必要なタングステン、モリブデン、ニッケルといった資材の会社側要求量に対して、査定量は40%から60%の水準とされ、査定量は主要資材の供給能力によって制約されていた。生産技術面では、資材、労働力の供給が制限されるなかで、増産を達成するために、歩留の向上が重点課題とされていた。査察当時の歩留は25%から45%と低位てあり、その原因として資材配給の不円滑、資材の不良、検査能力の不足、工員の未熟練などが挙げられていた。また、約680種にのぼる多品種生産が量産化を阻害する原因となっていた。労働力の面では、労務の改善によって20%から50%の能率向上が期待され、2交替制を70%以上の会社に導入することが可能との見透しが明らかにされていた。この報告からも、電波兵器の生産が1943年から44年にかけて最重点課題になっていたことが判明するが、アメリカの戦略爆撃調査団のデ-タによれば、1944年になって、通信機向け原料の配給が通常の電気機械向けを大きく上回るようになった。 このように、電気機械生産の重点が通信機をはじめとする軍需にシフトしたことは電気機械企業内部の生産構造に影響を与え、大企業の先端的軍需市場への転換に伴う、従来型市場の競争構造の変化などが生じた(この点は経営史学会関東部会1989年4月例会にて発表)。