ヒマラヤ雪氷圏の最近の衰退の原因解明に関する研究
研究課題情報
- 体系的番号
- JP09490018 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 09490018
- 研究種目
- 基盤研究(B)
- 配分区分
-
- 補助金
- 審査区分/研究分野
-
- 広領域
- 研究機関
-
- 名古屋大学
- 研究期間 (年度)
- 1997 〜 1999
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 10,900,000 円 (直接経費: 10,900,000 円)
研究概要
ヒマラヤ雪氷圏の衰退の原因を探るために、ヒドゥンバレーで採取した雪氷コアについて、イオン分析や粒子分析、トリチウム分析を実施した。さらに、その中に含まれるアミノ酸の分析を実施した。その結果、アミノ酸の濃度変化が生物活動の指標として利用でき、その周期変化を数えることによりコアの年代を推定できる可能性があることが明らかになった。また、アミノ酸の光学的異性体含有比の測定もおこなった。生物活動によってL型のアミノ酸が顕著に増加していることが見いだされた。その状態から熱力学的平衡状態(L型とD型との割合が等しい状態)への移行速度からコアの年代を推定できる可能性がある。 また、コアデータ解釈のために、北海道母子里での積雪観測で採取した試料の分析、解析と 観測データの解析を行った。その結果、積雪が融解を開始すると積雪粒子が急速に大きくなること、その速度は乾雪に比べて極端に大きいことを見いだし、その量的評価を行った。その結果を用いて、積雪層の安定同位体比の時間変化を説明し、氷河表面の積雪層で融解が生じるアジア高山地域で採取される雪氷コアの同位体データを解釈する道を拓いた。 現地観測データの解析では、デブリに覆われた氷河の収支に大きく影響する氷河表面に存在する氷壁および池の水の熱収支解析を実施した。氷壁の融解速度はデブリに覆われた部分の融解速度の70倍にも達し、氷河衰退の原因として大きく貢献していることが明らかになった。また池で吸収された熱はその場所ではなく、池からの流出過程で水路の周辺の氷を融かし、新たな池や氷壁を作り出すことによって、氷河の融解速度を加速しているという新事実を見いだした さらに、ネパールのドーラギリの谷及びショロン谷で採取した年輪試料を用いた年輪年代学的解析を実施した。 上記の成果について、データレポートを2冊発行するとともに、研究成果を一般に報せるために、英語版とネパール語版のパンフレットを作成した。