ユゴー作品の特質と影響の射程に関する総合的研究
-
- 稲垣 直樹
- 研究代表者
- 京都大学
-
- 小潟 昭夫
- 研究分担者/共同研究者
- 慶應義塾大学
-
- 丸岡 高弘
- 研究分担者/共同研究者
- 南山大学
-
- レボラール パトリック
- 研究分担者/共同研究者
- 南山大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP15520168 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 15520168
- 研究種目
- 基盤研究(C)
- 配分区分
-
- 補助金
- 審査区分/研究分野
-
- 人文社会系 > 人文学 > 文学 > ヨーロッパ語系文学
- 研究機関
-
- 京都大学
- 研究期間 (年度)
- 2003 〜 2005
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 3,400,000 円 (直接経費: 3,400,000 円)
研究概要
本研究の準備・基礎を成すFortunes de Victor Hugoヴィクトル・ユゴー生誕200年記念国際シンポジウムにおける研究発表を本科学研究費補助金研究の趣旨に沿って各自が練り直し、改稿したものを集成し、Naoki INAGAKI & Patrick REBOLLAR編著Fortunes de Victor Hugoと題してParisのMaisonneuve et Larose出版社から2005年5月に出版することができた。ユゴー研究の最先端を行く論文15編を収載し、総ページ数は247ページである。これにより、本科学研究費補助金研究の当初からの大きな計画を実現することが出来た。「研究成果報告書(冊子体)」には、このFortunes de Victor Hugo収載論文のうち、研究代表者、研究分担者3名、研究協力者1名のものについては日本語にて、海外共同研究者3名のものについてはフランス語にてそれぞれ論文を収載した(部分的改稿あり)。その準備・基礎段階を含めて本科学研究費補助金研究によって明らかになり、以上の諸論文の展開するところとなった新たな知見の一端を以下に示す。 (1)ユゴー作品に見られる多様な思想と多様な宗教観、さらには彼の甚大な影響は「諸宗教混交」syncretismeという観点から包摂的に把握することができる。(2)後年ユゴーが小説作品において展開するエクリチュールの様々な形態、様々なテーマ、様々な技法の萌芽が初期小説『アイスランドのハン』(1823)にすでに見られる。(3)ユゴーの詩作品には「通行人passant」「過ぎるpasser」といった流れ去る意味の語が特徴的に見られ、ユゴーにとって詩人は「異郷的視線」を持つ存在である。(4)イタリアのオペラ作曲家Verdiがユゴーの戯曲をもとに作曲したオペラ作品にまつわりユゴーの著作権闘争の経緯が初めて詳細に明らかになった。(5)Antoine Vitezを始めとする戦後の演出家たちが好んでユゴーの演劇作品を上演しているが、彼らがロマン主義の作品であるユゴーの演劇をむしろ象徴主義的な作品として演出したときに、現代の観客の感動を呼ぶ傾向がある。