中国近現代大同思想の研究
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- 竹内 弘行
- 研究代表者
- 名古屋大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP17520035
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
- 研究課題/領域番号
- 17520035
- 研究種目
- 基盤研究(C)
- 配分区分
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- 補助金
- 審査区分/研究分野
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- 人文社会系 > 人文学 > 哲学 > 中国哲学
- 研究機関
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- 名古屋大学
- 研究期間 (年度)
- 2005 〜 2006
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 1,600,000 円 (直接経費: 1,600,000 円)
研究概要
本研究は、中国の近代から現代に至る間の「大同思想」の内容を、実証的に追及したものである。 その結論は、『礼記』礼運篇に描かれた大同社会像、すなわち「天下ヲ公ト爲ス」平和な社会という内容が、清末以来、中国の伝統的な知識人から素朴な民衆にまで、広く受容されたこと、またそれによって西洋の民主主義・無政府主義・共産主義などの思想が、容易に受容されたことが認められた。 その初源は、王韜が、1867年に英国での講演で、中国も西欧も道は「大同に帰す」としていた事実に遡る。だが、王韜の言う道は中国伝統の倫理思想であった。この中国倫理の「中西大同」という立場は、清末の張之洞に継承され、さらに民国の段正元ら「道徳学社」の大同思想として普及した。他に当時の民衆道教や仏教でも同様の「中西大同」が口号とされた。 他方、民主主義・無政府主義・共産主義などの西欧社会政治思想にも、その内容の相違にもかかわらず、大同思想の名称が使われた。その典型がRichard(李提摩太)訳『大同学』(1899)であるが、それよりも早く康有為の大同思想にもみられた。この意味の大同思想という言葉は、民国後に共産主義の代名詞にもなるが、朱謙之のようにそれとの差異を主張して独自の「大同共産主義」を唱えた例もあった。 中国近代の大同思想は、前者の「中西大同」、実は中国伝統思想本位の「中華大同」の立場と、西欧の無政府主義や共産主義などを大同思想とする「民主大同」の二種類があった。これらが現代中国の毛沢東の共産解釈にも影響し、中国独自の倫理的な「人民公社」運動などになったと思われるが、それについては今後の課題である。 なお、関連する大同思想資料は、単行本30種、論文多数を収集し、『大同思想資料彙編』刊行の準備ができた。