ロシア教会における君主主義の系譜:在外ロシア教会からツァレボージュニキまで
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- 高橋 沙奈美
- 研究代表者
- 九州大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP17KK0019
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
- 研究課題/領域番号
- 17KK0019
- 研究種目
- 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
- 配分区分
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- 基金
- 審査区分/研究分野
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- 人文社会系 > 人文学 > 哲学 > 宗教学
- 研究機関
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- 九州大学
- 北海道大学
- 研究期間 (年度)
- 2018 〜 2022
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 8,970,000 円 (直接経費: 6,900,000 円 間接経費: 2,070,000 円)
研究概要
ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世は、革命以前の社会あるいは大国ロシアの象徴である。2000年にロシア正教会で「受難者」として列聖されて以来、現在に至るまでもっともポピュラーな聖人の一人でもある。しかし、そのようなニコライ二世像は、1980年代後半以降に亡命ロシア人社会から「輸入」されたものでもある。 本研究は、1920年代以降、亡命ロシア人社会において、ニコライ二世に神聖性が付与されていくプロセスについて明らかにした。そのうえで、聖人ニコライ二世の存在が、東方正教の信仰・ロシア語そして歴史的記憶を共有する「ロシア世界(ルースキー・ミール)」の中心に据えられるものであることを明らかにした。
2014年にウクライナ東部におけるドンバス紛争が始まって以来、ロシアでは「ロシア世界」が重要なキーワードになっている。この概念をけん引しているのがロシア正教会であり、聖人ニコライ二世は、「ロシア世界」を大衆にわかりやすく伝える視覚的なイメージの一つとなっている。 在位中には不人気な皇帝であったニコライ二世を、信仰心に篤く、伝統的な家族を重視し、自己犠牲をいとわない聖人として描き出したのは、亡命ロシア人社会であった。本研究は、亡命社会のロシア・ナショナリズムがソ連末期の社会に引き継がれたこと、また2000年のロシアにおけるニコライ二世一家列聖が、ロシア正教会の重要な転機であったことを明らかにした。